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新たなるUSBケーブルチェッカーをレビューする

おもしろそうな基板見つけた

純日本製のチェッカーを購入後にアマゾンを見ていると、LED満載のUSBケーブルチェッカーを見つけた。1,750円で、あろえ製の3割程度になっている。Treedix JPという中国マーチャントが今年4月26日から取り扱いを開始したもののようだ。米アマゾンでは2月20日から開始されていてそれなりにレビューが付いている。

 

改めてよく見るとどことなく雰囲気が初代あろえ作に似ている。電池ボックスが同じだからだろうか。違うのはサポートするコネクタの数。親側(ポートA群)としてあろえ作がAとCの2口しかないのに対して、Aをあえて4ピン、9ピンで分けて合計3口用意している。子側(ポートB群)はあろえ作のUSB 2.0 Mini-B、Micro-BとCの3口に加えて、USB 3.0のB,Micro-BとLightingの3口が追加されている。およそこの世の現行市販USBケーブルすべてがチェックできると言っていい。

 

接続図

基板を見ると、外部電源用の3端子レギュレータと整流ダイオード、各端子の抵抗・LEDだけで、ICらしき電子パーツが何もない。本当にケーブルの導通チェックをするだけだ。接続図を見ると24個のLEDはすべてポートB群のコネクタにつながっている。Type-Cの24ピンを基準として、それぞれ相当する信号線に割り当てられている。テストパッドを用意しているのは各自でテスタを使い導通や抵抗値を測ってくれということだろう。

変わり種LEDとしてIDとShieldがある。IDはType-B系で利用されるID(4番ピン)がGND(5番ピン)と短絡されている場合に点灯する。これはOTGケーブルとして機能することを意味している。


Shieldはケーブルシールド線が両端結線されている場合に点灯する。

裏面には各端子のピンアサインがシルク印刷されていている。LightingだけはUSBと合致しないので、この割当表が役立つ。なぜかLighting用の一部テストパッドが裏面にレイアウトされている。詳細は巻末の解説書を参照してもらいたい。

基板左下にCC1/CC2-GND、S-Gが用意されている。eMarker入りの場合はCC1/CC2のLEDが両点灯する。このとき、あとで紹介するプラグ内の抵抗値を測るほかに、CC1/CC2⇔GNDそれぞれで電圧を比べると低い値の方がVCONN側で、eMarkerチップが埋め込まれていることがわかる。S-GのSはプラグシェルでGは基板のGROUNDが出てきており、S-Gではシェルがプラグ内のGND端子と導通されているかのチェックはできない。Shieldが点灯する場合は電源元の電圧は現れる。意味不明なパッドだ。

あろえ作と違って上下を透明アクリル板でカバーなんて細工はしていないし、表も裏もテスタを当てる可能性がある。わたしは四隅に足をつけて100均の収納ケースに入れている。

USBケーブルの変遷

なぜこのように端子間の抵抗値を測らなければならないか。A-B時代はよかった。常に供給側である親はA、需給側の子はサイズの違いこそあれBだった。親子の関係は物理的に守られていた。しかし、Cが登場して様相が一変した。A-Cであれば今までと同じ親子関係だったが、親もCになることが許されたためC-Cという外見からは親子がわからない状態になってしまった。


最悪、充電器同士をC-Cケーブルでつなげてみるなんて人も出てくるかもしれない。モバイルバッテリー内蔵のACアダプタなんてのもあるから、これを2機つないだらどうなるか。何も対策がしていないとしたら考えただけでおそろしい。

 

というわけで、親Cのプラス電源(VBUS)は機器の接続有無に関わらず常に0V(コールドソケットという)になっている。ケーブルで機器がつながれた場合も親子関係がわからないうちは出力をしない。このため、親の場合はCで追加されたCC1/CC2とVBUSを抵抗でつなぐ(プルアップ)、子はCC1/CC2とGNDを抵抗でつなぐ(プルダウン)と決めた。これであればプルアップ同士がつながれても親同士とわかるので電源供給が始まらない。プルアップ抵抗値は56,22,10kΩが定義されていて、この値によって親の供給能力がわかるようになっている。子のプルダウン抵抗値は5.1kΩである。なお、パソコンやモバイルバッテリーは1つのCで親にも子にもなれる切替機能がついているものが多い。現行PDはこの方式によらず通信を行って供給を決めるので、より大きなあるいは可変の供給が可能になっている。

プラグ内の抵抗

話が長くなったが以上はメス側の話であって、ケーブルとなるオス側にも同様の抵抗値定義があるので、ケーブルチェッカーはその値も判別する必要があるというわけだ。まずA→Cケーブルの場合を見ていく。いまだに公共の場ではAポート供給が多いので持ち歩ている人はいるだろう。AポートはCと違い、常に5V供給がされているので子側にそれを知らせる必要がある。AプラグにはCCがないので、Cプラグ内CC1/CC2を56kΩプルアップして親側だと偽証する。
あるいは通常はC-Cケーブルを持っていて、必要なときだけA→C変換プラグを使う人がいるかもしれない。この場合もやはりC変換プラグ側のメスCC1/CC2を56kΩプルアップしていなければならない。
かなり前にGoogleエンジニアがこの56kΩを守っていない製品が多く、デバイスにダメージを与えると警告していたが最近はほとんどないようである。

VCONNに1kΩのプルダウン抵抗がある

C-CケーブルはPDというソフトプロトコルで決めるのでハードロジックは必要ない気がするが、ケーブル自体の能力を親子に知らせる方法としてプラグ内にeMarkerというチップを内蔵してその中の情報によりケーブル性能を担保する方法が採用された。チップの識別および電源供給としてプラグのVCONN(プラグ裏面)が1kΩでプルダウンされていたらチップ内蔵として電源が供給される。ケーブルチェッカーでテスタを使って1kΩプルダウンを検知したら、他のUSBテスタでeMarkerデータを読み出す。残念ながらeMarkerはオフライン仕様のため、偽証チップが多く出回っている。規格団体がC-AUTHというオンライン認証を発表しているためこれを採用した機器が出てくれば現在の格安C-Cケーブルはほぼ使えなくなるだろう。次期モデルのiPhone 15は初のCコネクタながらこのC-AUTHを採用する見込みという。

 

それでは今回購入したチェッカーを部分ごと詳細に見ていこう。

電源部

格安チェッカーと違い、あろえ作と同様にCR2032を搭載しているので外部電源を必要としない。一応、3.0~12VのDCを受け付けるようにはなっているがあえて用意する必要もないだろう。電源スイッチは基板に対して垂直のものに仕様変更されており使いやすくなった。

コネクタ部

基板に対して左が親側ポートA群、右と下の2辺が子側ポートB群になる。これは基板上に印刷しておいて欲しかった。各辺3つずつコネクタがレイアウトされている。先に説明の通り、本機はポートB群を基準に設計されている。

Type-B(2.0/3.0)

今となっては懐かしいケーブルである。昔はプリンタとの接続にこのひとつ前の四角い2.0コネクタを使った。この縦長タイプは外付けHDDでよく利用していた。

Type-C

もう今後はこれしかないだろう。12×2列24ピンメス(レセプタクル)はオス(プラグ)と一部レイアウトが異なる。メスのCC1・2と上下D±に相当する部分がオスではCC,VCONNと上D±になっている。これによってオスのCCをメスのCC1・CC2どちらで検出したかで表裏を判定する。逆のVCONNは1.0kΩプルダウン抵抗(GNDと接続)があればeMarkerチップ内蔵と判断されるようになっている。
A-CケーブルはCCに56kΩプルアップ抵抗(VBUSと接続)を入れる規定になっている。本機はそのチェックができないのでテスタで抵抗値を測る必要がある。測りたいプラグを必ずポートB側のCに挿さなければならない。

Micro-B(3.0)

従来のMicro-B(2.0)にD±2セットを端子的に並列追加したケーブルでMicro-B SuperSpeedと呼ばれる。薄型の外付けHDDで使用したことがあるぐらいでほとんど見かけないケーブルだった。

Mini-B(2.0)

これは比較的現役で使用しているケーブルである。現在も使っているドライブレコーダがこの端子なのでよく利用している。ドライブレコーダへの外部電源供給にこのケーブルを使って難儀したことがある。最終的にロングケーブルの抵抗値が高過ぎることに気が付いたが、そのときにチェッカーがあればもっと早く判明していた。

Ligthing

Appleバイスで使われている。発表当時は表裏なくめずらしいケーブルだったが、今はC普及により優位性は失われている。メス側は片側のみピンアサインされている。MFi認証チップのテストはできない。

Micro-B(2.0)

少し前のAndroidスマホにはほぼこの端子が採用されていた。Micro-B(3.0)の半分と互換性があるのになぜわざわざ用意したのだろう。

Type-A(3.0)

もっとも普及した4ピンのType-A(2.0)コネクタ奥に5ピンを追加した。ブルーのプラスチックインサートを使ったコネクタが多い。奥に新端子をレイアウトした都合で、ゆっくり挿すとUSB 2.0、速く挿すとUSB 3.0というおもしろい現象があると数年前にネットで話題になった。

Type-A(2.0)

これも互換性のあるType-A(3.0)コネクタにまとめればいいような気がするが分けてある。あろえ作ではType-A(3.0)のみにしてある。

Type-C

こちらのコネクタはケーブルの導通チェックのためだけに存在している。USB4仕様のケーブルを調べてみた。点灯しないD±の列がプラグの裏側を指している。

イレギュラーな使い方

接続図を見ると気が付くのがポートB群とテストパッドは導通されている。赤点線枠部分だ。本機はデバイスにつなぐなと警告プリントされているが、ちゃんと理解してつなぐ分にはいいと思う。USBケーブルの変遷で話した通り、メス側の特定ピンにどんな抵抗が付けられているかがわかれば、PDによらない場合の供給能力が判明する。例えばパソコンに付いているCコネクタがどのようになっているか調べたい場合、本機のポートBにあるCとパソコンのCをフル配線のC-Cケーブルでつないでやる。これでメスの端子部が基板上のテストパッドに現れることになる。これはLEDを光らせるわけではないので、本機電源を入れる必要はないし、パソコンの電源は切っておいた方がよいだろう。それ以外にCをもつデバイスがちゃんとプルダウンされているかどうか調べるのもいいだろう。

CC1orCC2に5.2kΩのプルダウン抵抗がある

わたしの所有しているType-C充電の電動エアガンでレセプタクルCC1/CC2⇔GND間の抵抗を計測すると5.2kΩで、シンクとして動作する仕様になっているのがわかった。

※この使い方は自身の責任において行うこと。当方で責任は負えない。

 

解説書

このブログから抜粋して本機の解説書を作ったので参考にされたい。

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