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USBケーブルの電源ライン抵抗値を計測する

USBケーブルの用途といえば充電かデータ転送がほとんどだろう。実際には8割9割が充電と思われる。となると気になるのがUSBケーブルがもつ電源ラインの抵抗値だ。

オームの法則は以下のような簡単な式で表される。

 E(電圧)=I(電流)×R(抵抗)

すなわち、抵抗値に応じて電圧も増えていく。5V3Aが流れるとするとケーブル抵抗によってこれだけ電圧が降下する。

  •  500mΩ

 3A×500mΩ/1000=1.5V、5-1.5=3.5V 

  •  100mΩ

 3A×100mΩ/1000=0.3V、5-0.3=4.7V

USB規格では5V±5%なので4.75~5.25Vとなり、上記はどちらも規格外になる。高電流になるほどケーブル抵抗の重要性がわかる。20V5AのPD 100Wではさらに問題になる。失われた電力は発熱につながる。

そこで手持ちのUSBケーブルの抵抗値を色々な方法で計測してみることにする。

今回はType-A⇔Type-C、Type-C⇔Type-Cの2本でケーブル抵抗値を測ってみる。

 

測定上の注意

  • 電源ラインの抵抗値は往復なのでVBUS間+GND間の合計値
  • コネクタの接触抵抗が含まれる(無視できるほど)
  • データ線の抵抗は測定できない(とくに必要ない)

 

USBケーブルチェッカー2

便宜上製作者の名前を取ってあろえチェッカーと呼ぶ。標準で抵抗測定機能を持っている。電源としてはCR2032の3Vしかない中でよく算出している。いかんせん数値が安定しない。同じような疑問を持つ人がいた。

4端子法(電圧降下法)を使った抵抗計測器を自作してしまっている。この方式で300mΩになるものがあろえチェッカーでは444mΩになるという。3割以上も誤差がある。

市販されている4端子法の測定器は東京デバイセズからIW7011-CSという型番で発売されている。アマゾンでは3,980円+送料800円で売られている。表示がないのでパソコンソフトを使うのと、2016年の製品なのでType-Cに対応していないのが残念だ。

あろえチェッカーではA-Cが282mΩ、C-Cが122mΩと算出された。

ただ、抵抗値が変動して安定しない。これは同じケーブルを翌日に測ったものだが、1割以上違う値を示している。当然ケーブル抵抗値はこれほど変動することがないので、数値の信頼も揺らぐことになる。

POWER-Z KM003C

メニュー内にCable Resistanceというものがあるが、選択すると「Not support」と表示される。まだ実装されていない機能になる。そもそも、KM003Cは入出力がそれぞれ1系統しかないので経路にターゲットとなるUSBケーブルを挿入するのが困難である。外付けの負荷抵抗オプションを作っていくつかのケーブルが挿せるようにしないとダメだろう。メーカーがそこまでのニーズを感じていないのか一向にサポートされる気配がない。

FNB58

FNIRSIから出ているFNBシリーズは対応コネクタが豊富なので、ほぼすべてのシリーズで電源ラインの抵抗値が計算できるメニューが搭載されている。必要なものは0.5~1Aの設定ができる定電流負荷装置である。ACアダプタの多ポートチェック用に小型の定電流負荷装置HD35を仕入れていたのでこれを使うことにする。基板上にトリガー機能があり、QC 2.0対応で5V,9V,12V,20Vも自由に取り出せる。1,800円で半年前に購入していた。最大35Wまで対応している。今回はトリガーは使わず5Vモードで使用する。

計測の方式は単純で、定電流負荷装置を出力側にセットしたUSBテスターを入力側に直挿ししたときの電圧・電流を記憶する。次に、入力側にターゲットとなるUSBケーブルを挿してUSBテスターにつなげる。このときの電圧降下をオームの法則に当てはめてUSBケーブルの抵抗値を計算して表示してくれる。

それでは実際にやってみよう。今回は安定に取り出せる電源として10000mAhのモバイルバッテリーを用意した。概ね±1mVの変動なので測定に与える影響が少ない。

準備

FNB58をケーブル抵抗値計測モードにして、中央値と思われるあたりでジョグダイヤルの中央をプッシュしてそのときの電圧・電流を記憶させる。

測定

FNB58を電源から抜いて、ターゲットとなるUSBケーブルを同じ電源部のAポートに挿し、FNB58のCポートに挿す。これでケーブルによる降圧分をUSBケーブルの抵抗値とみなして結果がmΩ単位で表示される。C-Cは入力がAからCに変わっているが、あとに述べる検証がしてあるので問題ない。メーカーは直挿しできるのがAポートだけなので、A-CかA-MicroBのケーブルしか使えないとしている。本来測りたいのはC-Cケーブルなわけなので、メーカー指定の方法を無視して計測してみた。

A-Cが171mΩ、C-Cが64mΩとなり、あろえチェッカーとの差がかなりある。今の状態ではどちらの値も信頼できないことになる。

A,Cポートの同一テスト

FNB58の入力に使用したAポートと違うCポートにターゲットUSBケーブルを挿すわけなので、前提としてモバイルバッテリーのAとCに同じ電力が供給されている検証が必要だ。FNB58はAポートに、KM003CはCポートに挿してみる。無負荷の状態でCポートの方が0.03V低い。ただこれはテスターの誤差かもしれないので、FNB58にKM003Cを亀の子してみるとやはりKM003Cが0.03V低い。これで、モバイルバッテリーのAとCは同じ電力だということにしよう。

おまけ

AtoCの変換プラグを持っていてこいつはどれぐらいの抵抗値を持っているか調べると意外に高い。ワイヤーがないのでそれほどでもないのかと思いきやかなりの抵抗だ。

次回予告

ただ、やはりモヤモヤする。あまりお金をかけずにより正確な測定をしてみたい。ミリオームテスターを購入して直接ケーブルの抵抗値を測って、あろえチェッカーかFNB58、どちらの数値がより正確なのか検証してみたい。