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格安サーモグラフィをレビューする

プロローグ

今まで充電器の耐久試験を行ってきた。定格最大で出力をして1時間経ったときの筐体温度はいかほどか。手で触ってヤケドしないレベルなのか、あるいは高温検知で自動停止するのか。ペンタイプの温度計を1,000円で購入したが、点でしか計測できないので筐体のどの部分が最高温度なのか手動でスキャンして探る必要があった。面でとらえるにはそれなりの投資をしなければならない。

予算は5千円程度

製品としてサーモグラフィをAmazonで検索すると2万円~10万円ほどのものが多く登場する。スマホに挿すタイプでもほぼ同じぐらいだ。もう少し安価なものがないのか。

サーモグラフィの値段を大きく左右するのが心臓部である遠赤外線温度センサーアレイだ。温度を見るための目がどれだけ細かくなっているかで値段が決まる。安価なものでは8×8なんてものもある。センサーの正面に置かれた正方形の板を8×8=64分割してそれぞれの1マスについて温度を計測できる機能を持っている。ちょうどオセロ盤と同じ仕様だと考えればいい。スマホのカメラで考えると64画素ということになる。先ほどの数万するサーモグラフィはこのセンサーが概ね320×240や240×240になる。出始めのころのデジカメ画素数程度だ。それでも5万~7万画素はある。

近接なら十分実用の768ピクセル

今回は妥協に妥協を重ねて、32×24ピクセルのセンサーモデルを購入した。ベルギーに本社を置くメレキシス(Melexis Technologies NV)というメーカーのMLX90640ESF-BABを使用している。一応昔のデジカメの形状をしていて5,350円だった。解像度は768画素なれど、被写体となる充電器をそれなりの近さで撮れば768分割してできる温度計測は十分と言える。

製品仕様

名前 サーマルイメージャー
外装素材 FR4エポキシ樹脂
バッテリー 200mAhリチウムバッテリー
赤外線センサー MLX90640ESF-BAB
センサー解像度 32×24ピクセル
ディスプレイ 1.8インチTFT
画面解像度 160×128ピクセル
温度測定範囲 -40~300℃
温度表示(+の色) 最高(赤紫)、中心点(白)、最低(緑)
測定精度 ±2℃ (中心面積0~100℃)
動作温度 10~50℃
作業湿度 70%以下
リフレッシュレート 8Hz
視野 水平55°垂直35°
キャリブレーション 不要
充電仕様 USB Type-C 5V/1A
作業時間 4時間以上
Uディスク容量 16MB(画像最大90枚、BMP形式)
撮影時 要15秒保持
データ転送 USB Type-C(コピーと削除が可能)
サイズ 66×47×20mm
重量 70g
付属品 USB Type-Cケーブル(A to C)

製品確認

パッと見た目は自分が使っているユピテルのドライブレコーダのようだ。スカスカなのか異常に軽い。真ん中の電源ボタンを長押しすると電源が入って計測モードにはいる。

やりたかったUSB充電器を1時間負荷かけて確認した。撮影ボタンはやはり真ん中のボタンである。押すと赤い四角に×が出てエラーになる。あとでわかったのだが、使い始める前にパソコンにつないで内蔵Uディスクをフォーマットする必要がある。フォーマット後は撮影が可能になる。∧・∨でUディスク内の画像を送って見ることができる。

画像の見方

下部の温度は左から最高温度、中心部温度、最低温度を指している。十字の位置が赤紫、白、緑でそれぞれの場所になっている。

センサーの解像度32×24がどの程度に見えるのか具現化してみた。概ねの輪郭はわかる。

最高温度の位置がわかっているので、ペンタイプで測ってほぼ同じような値だった。

Uディスク

パソコンからはドライブ内のIMAGEフォルダとしてカメラ内の撮影済みファイルを見ることができる。320×240ピクセルの画像で、ファイル名は通しになっているようだが、規則性はよくわからない。電源を入れてからの通算の秒数だろうか。

これから充電器の耐久テストも少しはかどるだろう。

240W対応1,000円USBテスターをレビュー

新製品

アリエクは毎日訪問すると70コインもらえるのでなかなかアクセスがやめられない。ちらっと表示された丸いものが目に入った。

前回、KM003C風のテスターを酷評したATORCHの新製品ではないか。なにやらたまごっちのようなデザインのテスターで、発売間もないためか200円引きのクーポンがついて1,000円程度で販売している。どうせショボい製品だろうと思いながらもスペックを見ると驚いた。

「PD3.1 600W」という文字が目に入った。240Wをはるかに超えるというのか。食い入るようにスペックを眺めた。

製品仕様

メーカー・製品名 ATORCH Type-C テスターモデル CC085
液晶画面 0.86インチ IPS HDカラーディスプレイ
電源供給方式 48Vフル電圧電源
重力センサー 〇(4方向)
ボタン タッチ式
電圧電流曲線 〇(一時停止可能)
電気パラメータ記録 最大電圧、電流、電力
電流 双方向12A
サンプリング抵抗 0.001Ω
データストレージ 100万回
インターフェイス TYPE-Cコネクタ・レセプタクル
TYPE-C 16ピン PD3.1 ストレートスルー
プロトコル通信 CC1/CC2プロトコル送信、D+/D-データ送信
温度測定 CPU温度
容量計算 電力値に基づいて容量を計算
パワーチップ DC-DCスイッチング電源
測定電圧 DC 4.5~50V
測定電流 0~6A(瞬間ピーク13A)
電力表示 0~600W
消費電力 0.15W未満
バッテリー容量計算 0~9999Wh
電力容量表示 0~9999mAh
動作温度 0℃~45℃
製品サイズ 43mm×36mm×10mm
製品重量 8g
言語 英語・中国語

スクリーンショット

基本的な機能

動作環境

KM003Cと同様にType-Cのオスメスどちらにも電流が流せる。本機自体は外部電源を持たず通過電源で動作する。このため極端な低電圧には対応できず、下は4.5Vからになっている。消費電力は0.15W以下とのことだが、測定値をどの程度校正しているか確認する必要がある。

タッチボタン

物理ボタンを用意せず、触れるだけで画面が切り替えられるのはよい。コネクタが挿さった状態で操作するので、測定側にストレスがかからなくてよい。KM003Cの場合はテスター本体を支えながらボタンを押すことになる。

測定範囲

50V6Aに対応しているので、PD3.1 EPRの48V5Aは余裕でクリアしている。瞬間的な電流は13Aまで耐えるというので実に650Wまでいけることになるが、表示は600W上限とのこと。そのようなおそろしい直流電流を測ることはおそらくないだろう。

画面ローテート

重力検知をするのでKM003Cと同様に自動で画面の向きが変わる。時々意図しない方向に回ってしまうのはスマホでもあることなのでご愛敬だ。

パススルー

Type-Cはコネクタで22ピン、レセプタクルで24ピンを持つ。このうちVBUSとGNDが3本ずつ重複するので実際にはコネクタ16ピンとレセプタクル18ピンがスルーされていれば本機を経路に挿し込んだことによる断線はない。

本機は急速充電プロトコルを判別できるわけではなく、CCやデータ線を通すのでそれらの邪魔をしないというだけだ。

ダッシュボード

一番利用頻度の高い画面だろう。上から電圧、電流(向き)、電力、電力時、通電時間、本機温度を表示している。ATORCHらしからぬ落ち着いた配色だ。画面ローテートに合わせて電流向きは変わる。

最大値表示

通電中の電圧、電流(向き)、電力の最大値が表示される。下段に現在値の電圧、電流、電力が表示されている。

電圧電流曲線

通電中の電圧、電流の変化がグラフで表示される。表示範囲は5秒に限られ過去のデータは見れない。タッチボタンを押すことで表示を止めることができる。

容量計算

バッテリーを充電したり、放電する場合に通常の3.7V換算でどれだけの電気容量になったかを表示する。変換効率は通常90%のままでよい。

データストレージ

通電中の電流計測結果を0.1秒ごとに記録している。約27時間分記録されるがスクロールできるわけではないので利用価値はあるのだろうか。

カラーバリエーション

クリア、ブラック、ブルーのいずれもスケルトンで3色用意されている。当然中身が一番キレイに見えるクリアタイプを選択した。

実機確認

注文から1週間ほどで到着した。アクリル製なのでキズがいっぱいつきそうだが千円テスターにそれほど気を使わなくていいだろう。表と裏に保護フィルムは貼られている。

2つのがタッチセンサーの役割を果たしている。静電式ではないので、無機物であってもこのふたつをふさぐように近づけるとライトが点灯して反応する。なかなかにおもしろい。

タッチセンサー

反応はすこぶるよい。ちょっと難しいが3タップで内容を変更することができる。

画面ローテート

4方向リアルタイムに変わる。最近のテスターはほとんど有している。

導通チェック

自分の出せる環境では150Wほどが上限なのでまずはそれを流してみた。300W(瞬間600W)テスターの限界を試せないのは残念だ。IPS液晶なのでどの方向から見ても画面はキレイに見える。しかし、0.86インチの液晶は小さ過ぎた、500円玉で隠れてしまう。

パススルーチェック

コネクタとレセプタクル間のパス状況をチェッカーで確認した。まったくスペック表通りではなかった。VBUS/GND/D+/D-/CC1/CC2しか通っていない。しかもD+/D-が両面点灯しているということはテスター内で短絡されていることを意味している。こんな乱暴なテスターを見たことがない。

参考までにKM003C/FNB58の正当なテスターとしての役割を見て欲しい。

追記

ATORCHに問い合わせをしていたら回答がきた。要約するとKM003CやFNB58のような高級機と千円テスターを同列にするなってことらしい。16ピンを主張する根拠となる回路図も送られてきた。

確かに基板を見るとコネクタは片面7ピンしかないものを使っている。レセプタクルに至っては片面実装のものなので、いずれもプラグ内で導通しているのだろう。電源専用のテスターと割り切って、それ以外の経路に置くことは考えない方がいいだろう。

校正(筆者間違い)

バッテリーからテスターを数珠つなぎして最後を電子負荷装置とした。QC 2.0で9V/0,1,2Aを通した。千円テスターが常に0.9Aほど高い値を指している。常にそうかというと、正値から低い方向の場合もあってテスターとしての正確性にまったく欠ける。いくら安くても大体の値も出ないのであればそれはゴミだ。画像を英文にしているのは、アリエクに返品を申し入れる根拠画像にしたためだ。

これほど安かろう悪かろうは見たことがない。テスターの体をなしていないのはこの個体のみなのか、それとも全部なのか。ATORCHの裁定を待っている。

無負荷時電流値修正

ATORCHから返信がきた。要約すると、あなたそれ無負荷時に電流を調整する機能を変更しちゃってるでしょというもの。え?そんなことをしたか?と思い見直した。

な、なってた・・・。タップ操作が微妙だから画面切り替え時に無意識にやったと思われ。

慌ててゼロクリアして確認をすると問題がなくなっていた。やれ恥ずかし。

ということで、1,000円で十分使えるUSBテスターであった。画面が小さいのと、全ピンパススルーになっていないのが難点だが、それに勝る価格が魅力だ。

ポテト加湿器のUSBケーブル焼損を検証

ポテト加湿器の付属USBケーブルはなぜ燃えたのか

福袋ってヨドバシカメラぐらいしか申込みしていないが、ここ数年は抽選にかすりもしない状態が続いている。飲食系はまず購入しないが、ネットニュースで気になったのがこれ。

マックの福袋は昨年のうちに申込み抽選をして、当選者に今年元旦から配布したようだ。3000円で買って3000円以上の商品券が入っているのでそれ以外はおまけみたいなものだ。その中にポテト加湿器があった。

マクドナルドがこのような警告を出すということは何かあったなと検索をすると、1月14日にXでポテト加湿器付属のUSBケーブルが燃えたという投稿があった。

見ると、ケーブル中ほどで2か所にわたって焦げ跡がある。畳も焦げているのでこの時点では発火していたものと推察される。火事にならなくて何よりだった。タダのおまけで家が燃えてはたまらない。

これを受けてか、1月17日になってマクドナルドから使用に関するリリースがでた。給電口としてType-Cのレセプタクルをつけておいて制限をかけるとは何ごとだろう。

マックの主張は以下の3点。赤字後出しジャンケン

  1. 電源アダプターは3~5V/2A以下を使用
  2. USB PD急速充電器とモバイルバッテリーの使用はダメ
  3. 付属のUSBケーブル以外はダメ

そもそも給電する装置が付属していないのだから自前で用意するしかない。付属USBケーブル以外を使うなは納得できるが、PD充電器を使うなとか後付け警告はいかなるものか。なぜこのようなことになったのか調べてみる。

ポテト加湿器を調達、値崩れして格安だった

ネットで調べるとポテト加湿器は500~800円程度で取引されている。今後どんどん暴落していくだろう。検証のため未使用品を調達した。

パッケージを確認するとサプライヤーサニーサイドアップとある。製造メーカーではない。この手の景品というとかつては百貨店外商がサプライヤーの独壇場だったが、一度不具合が発覚すると全品回収になったり代替品を用意したりと必ずしもおいしいマーケットではなくなっている。嗜好の変化もありベタ付け景品も減り、ノベルティジャンルでの物販はますます厳しくなるだろう。とくに今回のような電源が絡む製品は怖い。場合によっては財産や人命に関わることになるからだ。今回の加湿器も電源アダプターを同梱しなかったのはPSE絡みの製品を入れたくなかったということだろう。それでもケーブル焼損で問題点が浮き彫りになり、慌てて火消しを行っているわけだ。

パッケージ裏面記載は5V0.23Aなので本機の消費電力は1.15Wということを表している。

同梱物

取扱説明書では充電式USB電源(モバイルバッテリーのことと思われる)を禁止する項目はあるものの、PD充電器や急速充電器を禁止する項目はない。新たにHPで追記された2Aはケーブルの仕様上限と思われる。ネットを見ない人は注意喚起を知りようがない。

取扱説明書では加湿機本体へのセット方法説明3.でマイクロUSBプラグという誤植がある。開発時はMicro USB Type-B(2.0)だったのだろうか。

分解

分解しにくいように△ネジが使われている。実はサイズが合えばマイナスドライバで開けられる。心臓部となる基板は非常に小さいものだった。筐体の大半は水を蓄えてスポンジで吸い上げる機構である。

付属のUSBケーブルと霧吹きの主体となる超音波発振子になる。

基板の表裏になる。基板にシルク印刷されている2023.09.13は製造日を表すのだろう。結構新しい。本機はLEDがないので、通電されているかどうかの確認ができないのは欠点だ。実際、水を入れても加湿されないという書き込みを多く見かける。不具合なのか、単に電源が入っていないだけなのか、水の吸い上げのコツがちょっとできていないだけなのかがわからない。USBテスターでも持っている人でないと外からの通電確認は不可能だろう。

本体Type-Cレセプタクル

本機は電源入力端子としてUSB Type-Cを採用した。iPhoneでさえType-Cになった現在、ちまたにはありとあらゆるType-C製品があふれている。充電器しかり、バッテリーしかり、ケーブルしかりである。そのどれをつなげても少なくとも事故が起きないように設計されているのがUSB-IFが定めたType-Cポートである。それを採用した以上、規格に合った製品を作るべきで、あれダメこれダメは通じない。

シンクとなる加湿器のType-CレセプタクルCC1/CC2は5.1kΩ±20%でプルダウンされていなければならない。中華製Type-Cレセプタクル搭載機器ではプルダウンされていないものも多いので、その場合はC-Cケーブルではコールドソケット仕様により通電されないようになっている。本機はレセプタクルの右に見える512というチップ抵抗2個がそれになる。

結線図

改めて付属USBケーブルと基板側のレセプタクル結線図を記載する。まず、レセプタクルは規定のプルダウンがされており問題がない。このため本機はPD充電器とC-Cケーブルを使って問題なく電力供給が行えるようになっている。ただし、シンクにD+/D-がアサインされておらず電力要求機能がないのでBC1.2(Battery Charging Specification 1.2)の機能を有していないのがわかる。このため、ソース側の供給能力に依存する。電源のVBUSとGNDのみが引かれているので、3Aくれば3Aが流れてしまう。

付属USBケーブル

A-Cとなる付属USBケーブルのAレセプタクルはVBUS/GNDのみになっている。D+/D-がないのでSDP(Standard Downstream Port)として5V/0.1~0.5Aのポートになる。SHILED処理はされておらず、このケーブルの被覆を剥がすと赤黒2本の細い線があるのみと思われる。Cコネクタ内ではCCが56kΩプルアップ処理されていてA-Cケーブルの規定に合っている。D+/D-は短絡されている。このケーブルは電源専用ケーブルの仕様を満たしているため別の用途に使えなくもない設計にはなっている。

しかし、明らかに内部抵抗が高い。1Ωを超えてしまっている。手持ちのケーブルと比べると7倍以上差がある。

低負荷ケーブルが5Vなのに対して、付属USBケーブルは電圧降下が著しいのがわかる。消費電力が少ないので問題ないが、このケーブルは他に流用しない方がいいだろう。自前ケーブルはD+/D-があるので、急速充電のプロトコルを検出している。

適合する電源アダプター

同梱しなかったのでType-Aの電源は自前で用意しなければならない。Aは5V/0.1~3A、またQuick Chargeのような急速充電プロトコルをもつものだと3.6~20Vまでを出力したりする。マックでは充電器といわず頑なに電源アダプターと呼称している。

今回、付属USBケーブルと基板ではどのA充電器を使っても急速充電なしの5V0.5Aが上限になる。実際噴霧テストをしても0.4Aを超えることはなかった。また、PD充電器がダメと言っているが、240W対応のC-Cケーブル+PD充電器またはモバイルバッテリーの組み合わせであってもまともな規格品なら5V0.5Aである。

なぜ付属USBケーブルは焼損したか

前置きが長くなった。ここからがようやく本題である。シンクがせいぜい0.4A程度しか消費しないのになぜケーブルが焼損したか。実際に畳を燃やしている。そしてマクドナルドも慌てて警告案内をHPに出さざるを得なかった。

今回の警告で5V2Aまでの電源アダプターを使えといったのは、2Aまでであればケーブルが耐えられるとの判断だろう。しかも、USB規格に準拠したものなら5V0.5A以上を流さないはず。

実際、今回燃えてしまった方に使用した電源をお聞きした。

オーム電機製のUSBポート付タップだった。5V2.4Aなので後付け仕様は超えている。ケーブルが燃えたということは2.4A流れ続けた可能性がある。第一実行犯はこいつである。0.5Aの供給で打ち止めにしていれば畳は燃えなかった。

終売品なので同じものは入手できず、同じオーム電機製の5V2.4AのAポート付きタップを入手した。対応している充電規格はApple 2.4AとDCP 5V/1.5Aだ。この手のタイプで2.4Aと書かれているものはほとんどApple 2.4Aという規格に対応していることを指している。D+/D-が2.7Vになっている場合に2.4Aを出力する。ただ、大人の事情で書けないのだ。

今回の付属USBケーブルはSDP 5V/0.5Aが供給の上限である。これでポテト加湿器は十分動作する。そしてオーム電機のタップはケーブルに関係なく請われれば2.4Aを出力した。もっともこれはほぼどの充電器やモバイルバッテリーも同じである。シンク側に何らかの問題が発生して本来必要な電力を超えた要求をしてもソース側の能力で応え、結果ケーブルが耐えきれずに焼損する可能性はある。

では0.5A超を要求した真犯人を推理する。ポテト加湿器の心臓部となる超音波振動子は非常に電極が密接している。水滴が着いて短絡したのだろうか。あるいは基板内のどこかが噴霧により導通してショートしたのだろうか。推奨されている水道水は残留塩素の関係で純水の100倍導電しやすい。

当人にお聞きしたところ20時間程度正常に使えた上での焼損だったとのことだ。レセプタクル内まで浸水してType-Cコネクタ内のVBUS/GNDが導通したのだろうか。考え出すと霧、じゃないキリがない。

念のため、故意に導体で短絡を再現するとUSBケーブルに流れる電流は以下の通りだった。水道水の場合は地域によって導通率が変わるだろう。

  • 超音波振動子・・・1.1A
  • レセプタクルVBUS/GND・・・3.5A

■推定されるケーブル焼損原因

  1. 電源アダプターの供給が0.5Aを超えてなされた
  2. 付属USBケーブルの抵抗が大きく発熱につながった
  3. 加湿器の割に防水対策は取られておらず基板内ショートを誘発した

市場には正体不明の電源アダプターは数多く存在する。今回かなりの数を配布したようなのでまた同じことが起こらないことを祈る。

おまけ

ここまで検証したらこの粗悪ケーブルは使いたくないので、コネクタ付け根の被覆を取り除いた。果たして予想通りであった。シールドなしの赤黒2本でしかもかなり細い。1本500mΩあるのもうなづける。Type-Cのコネクタ基板にはRpとRdがあり、Rpに56kΩチップ抵抗がついている。マック曰く付属USBケーブルを使うことという主張だが、できればこのケーブルは常用したくない。

追記1(破損報告)

引き続きXにはポテト加湿器の不具合報告が続く。単純に水の吸い上げができていないものから、初期不良のようなものまでさまざま。そんな中で、今回の記事にあるような電源系のトラブルと思われるものを見かけたので投稿者に了解を得て紹介させていただく。

付属のUSBケーブルを使わなかった時点で、最初の落ち度は使用者にあるのだが、PD充電器+C-Cケーブルでの接続を行ったら通電時に加湿器自体が発熱して内部の白い吸い上げ棒も茶色く焦げていたとのこと。超音波発振子は発熱しないので、基板内のどこかで短絡なりが発生したと思われる。これも火事にならなくて幸いだった。

問題になったPD充電器はこちら。USBケーブルは100Wのものを使用していたので問題なかったそうだ。アメリカ仕向と思われるミッキーケーブルを採用したもので当然PSEマークはない。2020年の発売だからこの当時で100W(MAX150W)はそれなりのスペックだ。まだPD3.1 EPR発表前ということになる。先の結線図の通り、本機はC-Cケーブルで接続しても、加湿器側がVBUS/GNDしかアサインされていないのでまともな充電器であれば5V0.5Aしか流さない。PD通信はしていないので5V超は出さないと思うが、信頼性のない充電器なので事故時どんな電圧電流を供給したのかは不明だ。その後、投稿者が再度テスターを使って調べると動作はしないものの5V/0.11A程度で異常電流は流れていないようだ。

後付け警告であるように本機では安全を考えて10W程度までの充電器を使うのがいいようだ。

追記2(破損報告)

Xでのポテト加湿器不具合報告を見かけると声をかけさせてもらっている。先日はなぜかお聞きしたら元投稿を削除して消えてしまわれた。何かと間違われたのだろうか。

今回の方はレセプタクル内の樹脂が溶けてしまった。コネクタ内かレセプタクル側がショートしてかなりの電流が流れて高温になったのだろう。これまた火事にならなくてよかった。

今回の方の推奨でない使い方は唯一同梱ケーブルを使わなかったことだけだ。それもC-Cケーブルではなく、同梱と同じA-Cケーブルだ。おそらく同梱のものより程度のいいケーブルだと思う。

使用した充電器はPDではなく通常の5V1Aで規定内のものだ。レセプタクルの右側部は基板上のVBUS/GNDの位置に相当する。ここがショートしたことにより発熱し、レセプタクル内の樹脂が溶けてコネクタ金属部に付着したものと思われる。

水道水の導電率は地域によって変わる。基板には一応防水対策と思われるクリアが塗られているが、不完全なものもあるだろう。現実にこのような障害がいくつか報告されているのであるから、さらに大きな事故にならないことを祈るばかりだ。