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ポテト加湿器のUSBケーブル焼損を検証(追記)

ポテト加湿器の付属USBケーブルはなぜ燃えたのか

福袋ってヨドバシカメラぐらいしか申込みしていないが、ここ数年は抽選にかすりもしない状態が続いている。飲食系はまず購入しないが、ネットニュースで気になったのがこれ。

マックの福袋は昨年のうちに申込み抽選をして、当選者に今年元旦から配布したようだ。3000円で買って3000円以上の商品券が入っているのでそれ以外はおまけみたいなものだ。その中にポテト加湿器があった。

マクドナルドがこのような警告を出すということは何かあったなと検索をすると、1月14日にXでポテト加湿器付属のUSBケーブルが燃えたという投稿があった。

見ると、ケーブル中ほどで2か所にわたって焦げ跡がある。畳も焦げているのでこの時点では発火していたものと推察される。火事にならなくて何よりだった。タダのおまけで家が燃えてはたまらない。

これを受けてか、1月17日になってマクドナルドから使用に関するリリースがでた。給電口としてType-Cのレセプタクルをつけておいて制限をかけるとは何ごとだろう。

マックの主張は以下の3点。赤字後出しジャンケン

  1. 電源アダプターは3~5V/2A以下を使用
  2. USB PD急速充電器とモバイルバッテリーの使用はダメ
  3. 付属のUSBケーブル以外はダメ

そもそも給電する装置が付属していないのだから自前で用意するしかない。付属USBケーブル以外を使うなは納得できるが、PD充電器を使うなとか後付け警告はいかなるものか。なぜこのようなことになったのか調べてみる。

ポテト加湿器を調達、値崩れして格安だった

ネットで調べるとポテト加湿器は500~800円程度で取引されている。今後どんどん暴落していくだろう。検証のため未使用品を調達した。

パッケージを確認するとサプライヤーサニーサイドアップとある。製造メーカーではない。この手の景品というとかつては百貨店外商がサプライヤーの独壇場だったが、一度不具合が発覚すると全品回収になったり代替品を用意したりと必ずしもおいしいマーケットではなくなっている。嗜好の変化もありベタ付け景品も減り、ノベルティジャンルでの物販はますます厳しくなるだろう。とくに今回のような電源が絡む製品は怖い。場合によっては財産や人命に関わることになるからだ。今回の加湿器も電源アダプターを同梱しなかったのはPSE絡みの製品を入れたくなかったということだろう。それでもケーブル焼損で問題点が浮き彫りになり、慌てて火消しを行っているわけだ。

パッケージ裏面記載は5V0.23Aなので本機の消費電力は1.15Wということを表している。

同梱物

取扱説明書では充電式USB電源(モバイルバッテリーのことと思われる)を禁止する項目はあるものの、PD充電器や急速充電器を禁止する項目はない。新たにHPで追記された2Aはケーブルの仕様上限と思われる。ネットを見ない人は注意喚起を知りようがない。

取扱説明書では加湿機本体へのセット方法説明3.でマイクロUSBプラグという誤植がある。開発時はMicro USB Type-B(2.0)だったのだろうか。

分解

分解しにくいように△ネジが使われている。実はサイズが合えばマイナスドライバで開けられる。心臓部となる基板は非常に小さいものだった。筐体の大半は水を蓄えてスポンジで吸い上げる機構である。

付属のUSBケーブルと霧吹きの主体となる超音波発振子になる。

基板の表裏になる。基板にシルク印刷されている2023.09.13は製造日を表すのだろう。結構新しい。本機はLEDがないので、通電されているかどうかの確認ができないのは欠点だ。実際、水を入れても加湿されないという書き込みを多く見かける。不具合なのか、単に電源が入っていないだけなのか、水の吸い上げのコツがちょっとできていないだけなのかがわからない。USBテスターでも持っている人でないと外からの通電確認は不可能だろう。

本体Type-Cレセプタクル

本機は電源入力端子としてUSB Type-Cを採用した。iPhoneでさえType-Cになった現在、ちまたにはありとあらゆるType-C製品があふれている。充電器しかり、バッテリーしかり、ケーブルしかりである。そのどれをつなげても少なくとも事故が起きないように設計されているのがUSB-IFが定めたType-Cポートである。それを採用した以上、規格に合った製品を作るべきで、あれダメこれダメは通じない。

シンクとなる加湿器のType-CレセプタクルCC1/CC2は5.1kΩ±20%でプルダウンされていなければならない。中華製Type-Cレセプタクル搭載機器ではプルダウンされていないものも多いので、その場合はC-Cケーブルではコールドソケット仕様により通電されないようになっている。本機はレセプタクルの右に見える512というチップ抵抗2個がそれになる。

結線図

改めて付属USBケーブルと基板側のレセプタクル結線図を記載する。まず、レセプタクルは規定のプルダウンがされており問題がない。このため本機はPD充電器とC-Cケーブルを使って問題なく電力供給が行えるようになっている。ただし、シンクにD+/D-がアサインされておらず電力要求機能がないのでBC1.2(Battery Charging Specification 1.2)の機能を有していないのがわかる。このため、ソース側の供給能力に依存する。電源のVBUSとGNDのみが引かれているので、3Aくれば3Aが流れてしまう。

付属USBケーブル

A-Cとなる付属USBケーブルのAレセプタクルはVBUS/GNDのみになっている。D+/D-がないのでSDP(Standard Downstream Port)として5V/0.1~0.5Aのポートになる。SHILED処理はされておらず、このケーブルの被覆を剥がすと赤黒2本の細い線があるのみと思われる。Cコネクタ内ではCCが56kΩプルアップ処理されていてA-Cケーブルの規定に合っている。D+/D-は短絡されている。このケーブルは電源専用ケーブルの仕様を満たしているため別の用途に使えなくもない設計にはなっている。

しかし、明らかに内部抵抗が高い。1Ωを超えてしまっている。手持ちのケーブルと比べると7倍以上差がある。

低負荷ケーブルが5Vなのに対して、付属USBケーブルは電圧降下が著しいのがわかる。消費電力が少ないので問題ないが、このケーブルは他に流用しない方がいいだろう。自前ケーブルはD+/D-があるので、急速充電のプロトコルを検出している。

適合する電源アダプター

同梱しなかったのでType-Aの電源は自前で用意しなければならない。Aは5V/0.1~3A、またQuick Chargeのような急速充電プロトコルをもつものだと3.6~20Vまでを出力したりする。マックでは充電器といわず頑なに電源アダプターと呼称している。

今回、付属USBケーブルと基板ではどのA充電器を使っても急速充電なしの5V0.5Aが上限になる。実際噴霧テストをしても0.4Aを超えることはなかった。また、PD充電器がダメと言っているが、240W対応のC-Cケーブル+PD充電器またはモバイルバッテリーの組み合わせであってもまともな規格品なら5V0.5Aである。

なぜ付属USBケーブルは焼損したか

前置きが長くなった。ここからがようやく本題である。シンクがせいぜい0.4A程度しか消費しないのになぜケーブルが焼損したか。実際に畳を燃やしている。そしてマクドナルドも慌てて警告案内をHPに出さざるを得なかった。

今回の警告で5V2Aまでの電源アダプターを使えといったのは、2Aまでであればケーブルが耐えられるとの判断だろう。しかも、USB規格に準拠したものなら5V0.5A以上を流さないはず。

実際、今回燃えてしまった方に使用した電源をお聞きした。

オーム電機製のUSBポート付タップだった。5V2.4Aなので後付け仕様は超えている。ケーブルが燃えたということは2.4A流れ続けた可能性がある。第一実行犯はこいつである。0.5Aの供給で打ち止めにしていれば畳は燃えなかった。

終売品なので同じものは入手できず、同じオーム電機製の5V2.4AのAポート付きタップを入手した。対応している充電規格はApple 2.4AとDCP 5V/1.5Aだ。この手のタイプで2.4Aと書かれているものはほとんどApple 2.4Aという規格に対応していることを指している。D+/D-が2.7Vになっている場合に2.4Aを出力する。ただ、大人の事情で書けないのだ。

今回の付属USBケーブルはSDP 5V/0.5Aが供給の上限である。これでポテト加湿器は十分動作する。そしてオーム電機のタップはケーブルに関係なく請われれば2.4Aを出力した。もっともこれはほぼどの充電器やモバイルバッテリーも同じである。シンク側に何らかの問題が発生して本来必要な電力を超えた要求をしてもソース側の能力で応え、結果ケーブルが耐えきれずに焼損する可能性はある。

では0.5A超を要求した真犯人を推理する。ポテト加湿器の心臓部となる超音波振動子は非常に電極が密接している。水滴が着いて短絡したのだろうか。あるいは基板内のどこかが噴霧により導通してショートしたのだろうか。推奨されている水道水は残留塩素の関係で純水の100倍導電しやすい。

当人にお聞きしたところ20時間程度正常に使えた上での焼損だったとのことだ。レセプタクル内まで浸水してType-Cコネクタ内のVBUS/GNDが導通したのだろうか。考え出すと霧、じゃないキリがない。

念のため、故意に導体で短絡を再現するとUSBケーブルに流れる電流は以下の通りだった。水道水の場合は地域によって導通率が変わるだろう。

  • 超音波振動子・・・1.1A
  • レセプタクルVBUS/GND・・・3.5A

■推定されるケーブル焼損原因

  1. 電源アダプターの供給が0.5Aを超えてなされた
  2. 付属USBケーブルの抵抗が大きく発熱につながった
  3. 加湿器の割に防水対策は取られておらず基板内ショートを誘発した

市場には正体不明の電源アダプターは数多く存在する。今回かなりの数を配布したようなのでまた同じことが起こらないことを祈る。

おまけ

ここまで検証したらこの粗悪ケーブルは使いたくないので、コネクタ付け根の被覆を取り除いた。果たして予想通りであった。シールドなしの赤黒2本でしかもかなり細い。1本500mΩあるのもうなづける。Type-Cのコネクタ基板にはRpとRdがあり、Rpに56kΩチップ抵抗がついている。マック曰く付属USBケーブルを使うことという主張だが、できればこのケーブルは常用したくない。

追記1(破損報告)

引き続きXにはポテト加湿器の不具合報告が続く。単純に水の吸い上げができていないものから、初期不良のようなものまでさまざま。そんな中で、今回の記事にあるような電源系のトラブルと思われるものを見かけたので投稿者に了解を得て紹介させていただく。

付属のUSBケーブルを使わなかった時点で、最初の落ち度は使用者にあるのだが、PD充電器+C-Cケーブルでの接続を行ったら通電時に加湿器自体が発熱して内部の白い吸い上げ棒も茶色く焦げていたとのこと。超音波発振子は発熱しないので、基板内のどこかで短絡なりが発生したと思われる。これも火事にならなくて幸いだった。

問題になったPD充電器はこちら。USBケーブルは100Wのものを使用していたので問題なかったそうだ。アメリカ仕向と思われるミッキーケーブルを採用したもので当然PSEマークはない。2020年の発売だからこの当時で100W(MAX150W)はそれなりのスペックだ。まだPD3.1 EPR発表前ということになる。先の結線図の通り、本機はC-Cケーブルで接続しても、加湿器側がVBUS/GNDしかアサインされていないのでまともな充電器であれば5V0.5Aしか流さない。PD通信はしていないので5V超は出さないと思うが、信頼性のない充電器なので事故時どんな電圧電流を供給したのかは不明だ。その後、投稿者が再度テスターを使って調べると動作はしないものの5V/0.11A程度で異常電流は流れていないようだ。

後付け警告であるように本機では安全を考えて10W程度までの充電器を使うのがいいようだ。

追記2(破損報告)

Xでのポテト加湿器不具合報告を見かけると声をかけさせてもらっている。先日はなぜかお聞きしたら元投稿を削除して消えてしまわれた。何かと間違われたのだろうか。

今回の方はレセプタクル内の樹脂が溶けてしまった。コネクタ内かレセプタクル側がショートしてかなりの電流が流れて高温になったのだろう。これまた火事にならなくてよかった。

今回の方の推奨でない使い方は唯一同梱ケーブルを使わなかったことだけだ。それもC-Cケーブルではなく、同梱と同じA-Cケーブルだ。おそらく同梱のものより程度のいいケーブルだと思う。

使用した充電器はPDではなく通常の5V1Aで規定内のものだ。レセプタクルの右側部は基板上のVBUS/GNDの位置に相当する。ここがショートしたことにより発熱し、レセプタクル内の樹脂が溶けてコネクタ金属部に付着したものと思われる。

水道水の導電率は地域によって変わる。基板には一応防水対策と思われるクリアが塗られているが、不完全なものもあるだろう。現実にこのような障害がいくつか報告されているのであるから、さらに大きな事故にならないことを祈るばかりだ。

追記3(焼損報告)

Xで一番ひどい報告があがってしまった。

こちらのコメント欄でもお知らせいただいた。こうなるとよく火事にならなかったと思う。マクドナルドは一軒丸ごと燃えて焼死者でも出ないと動かないのだろうか。第一番報告の畳が焦げた方もつい最近ようやく事務局(サプライヤー?)から連絡があったという。

 

畳焼損報告内容

  1. 三者検査機関で調査
  2. ケーブルへ外部負荷がかかり内部ショートが原因
  3. 本製品に不良はない

ソファ焼損報告内容

  1. 三者検査機関で調査
  2. 使用時に落下衝撃等の外部負荷が加わったことが原因で、加湿器側のコネクター内部端子が曲がり、差込口でショートが発生した

  3. 本製品に不良はない

ご覧の通り、ほぼ同じ報告内容でどちらも3か月ほどかかっている。今後、事務局は一定期間置いてこのテンプレートを使うつもりだろうか。

 

両者の違いは、前者がケーブル全体どちらかというとワイヤー部分の焼損、後者が主にType-C側のコネクタ付近で起きている。この外的現象だけで推定した想像の原因を被害者に伝えているに過ぎない。

いずれもサプライヤーが勧める同梱ケーブルを使用しての事故だ。普通に畳の上に置いて使っているだけでどんな外部負荷がかかるというのだろう。何か重いものでケーブルを踏みつけて、片側500mΩもある非常に細く切れそうなワイヤー被覆が内部で剥がれてショートしたというのだろうか。あくまでも原因は加湿機本体でも同梱ケーブルでもない。原因は外部と断定している。

ソファの場合はもっとひどい。外部に原因を求めているところまでは同じだが、その結果、コネクタ内部端子が曲がりとした。ここは非常に問題発言である。

Type-Cは全24ピンあるうちの片側にご覧の通り離されてVBUS,GNDがレイアウトされている。両面挿しが可能になっているので、この下側も同じレイアウトだ。万が一縦方向に負荷がかかり内部で導通したとしても上下方向では同じVBUS,GND同士なのでショートすることはない。そして、左右にずれた場合は・・・そもそも左右にずれることはない。レセプタクル内に収まって多少のずれは設計許容範囲内である。さらに超えてこの距離をショートさせるには、レセプタクルを収めるガワがとっくに破損していない限り不可能なのだ。物理的にあり得ない。そうならないようにUSB-IFはこの規格を定めている。直接的な原因を目に見えない証明できない外部負荷に求めて、その結果間接的にありもしないコネクタ破損を導き出した。

 

この両方の結果からしてもこの第三者検査機関のレポート内容の正確性が問われる。いずれの被害者にもこの謎の検査機関名とレポート結果は公開されていない。ここまで来てしまったら真摯な対応を求める。名探偵コナンを使ったCMを流すフードメーカーなら真実はいつもひと~つとしたい。