新製品
アリエクは毎日訪問すると70コインもらえるのでなかなかアクセスがやめられない。ちらっと表示された丸いものが目に入った。
前回、KM003C風のテスターを酷評したATORCHの新製品ではないか。なにやらたまごっちのようなデザインのテスターで、発売間もないためか200円引きのクーポンがついて1,000円程度で販売している。どうせショボい製品だろうと思いながらもスペックを見ると驚いた。
「PD3.1 600W」という文字が目に入った。240Wをはるかに超えるというのか。食い入るようにスペックを眺めた。
製品仕様
メーカー・製品名 | ATORCH Type-C テスターモデル CC085 |
液晶画面 | 0.86インチ IPS HDカラーディスプレイ |
電源供給方式 | 48Vフル電圧電源 |
重力センサー | 〇(4方向) |
ボタン | タッチ式 |
電圧電流曲線 | 〇(一時停止可能) |
電気パラメータ記録 | 最大電圧、電流、電力 |
電流 | 双方向12A |
サンプリング抵抗 | 0.001Ω |
データストレージ | 100万回 |
インターフェイス | TYPE-Cコネクタ・レセプタクル |
TYPE-C | 16ピン PD3.1 ストレートスルー |
プロトコル通信 | CC1/CC2プロトコル送信、D+/D-データ送信 |
温度測定 | CPU温度 |
容量計算 | 電力値に基づいて容量を計算 |
パワーチップ | DC-DCスイッチング電源 |
測定電圧 | DC 4.5~50V |
測定電流 | 0~6A(瞬間ピーク13A) |
電力表示 | 0~600W |
消費電力 | 0.15W未満 |
バッテリー容量計算 | 0~9999Wh |
電力容量表示 | 0~9999mAh |
動作温度 | 0℃~45℃ |
製品サイズ | 43mm×36mm×10mm |
製品重量 | 8g |
言語 | 英語・中国語 |
スクリーンショット
基本的な機能
動作環境
KM003Cと同様にType-Cのオスメスどちらにも電流が流せる。本機自体は外部電源を持たず通過電源で動作する。このため極端な低電圧には対応できず、下は4.5Vからになっている。消費電力は0.15W以下とのことだが、測定値をどの程度校正しているか確認する必要がある。
タッチボタン
物理ボタンを用意せず、触れるだけで画面が切り替えられるのはよい。コネクタが挿さった状態で操作するので、測定側にストレスがかからなくてよい。KM003Cの場合はテスター本体を支えながらボタンを押すことになる。
測定範囲
50V6Aに対応しているので、PD3.1 EPRの48V5Aは余裕でクリアしている。瞬間的な電流は13Aまで耐えるというので実に650Wまでいけることになるが、表示は600W上限とのこと。そのようなおそろしい直流電流を測ることはおそらくないだろう。
画面ローテート
重力検知をするのでKM003Cと同様に自動で画面の向きが変わる。時々意図しない方向に回ってしまうのはスマホでもあることなのでご愛敬だ。
パススルー
Type-Cはコネクタで22ピン、レセプタクルで24ピンを持つ。このうちVBUSとGNDが3本ずつ重複するので実際にはコネクタ16ピンとレセプタクル18ピンがスルーされていれば本機を経路に挿し込んだことによる断線はない。
本機は急速充電プロトコルを判別できるわけではなく、CCやデータ線を通すのでそれらの邪魔をしないというだけだ。
ダッシュボード
一番利用頻度の高い画面だろう。上から電圧、電流(向き)、電力、電力時、通電時間、本機温度を表示している。ATORCHらしからぬ落ち着いた配色だ。画面ローテートに合わせて電流向きは変わる。
最大値表示
通電中の電圧、電流(向き)、電力の最大値が表示される。下段に現在値の電圧、電流、電力が表示されている。
電圧電流曲線
通電中の電圧、電流の変化がグラフで表示される。表示範囲は5秒に限られ過去のデータは見れない。タッチボタンを押すことで表示を止めることができる。
容量計算
バッテリーを充電したり、放電する場合に通常の3.7V換算でどれだけの電気容量になったかを表示する。変換効率は通常90%のままでよい。
データストレージ
通電中の電流計測結果を0.1秒ごとに記録している。約27時間分記録されるがスクロールできるわけではないので利用価値はあるのだろうか。
カラーバリエーション
クリア、ブラック、ブルーのいずれもスケルトンで3色用意されている。当然中身が一番キレイに見えるクリアタイプを選択した。
実機確認
注文から1週間ほどで到着した。アクリル製なのでキズがいっぱいつきそうだが千円テスターにそれほど気を使わなくていいだろう。表と裏に保護フィルムは貼られている。
2つの▼がタッチセンサーの役割を果たしている。静電式ではないので、無機物であってもこのふたつをふさぐように近づけるとライトが点灯して反応する。なかなかにおもしろい。
タッチセンサー
反応はすこぶるよい。ちょっと難しいが3タップで内容を変更することができる。
画面ローテート
4方向リアルタイムに変わる。最近のテスターはほとんど有している。
導通チェック
自分の出せる環境では150Wほどが上限なのでまずはそれを流してみた。300W(瞬間600W)テスターの限界を試せないのは残念だ。IPS液晶なのでどの方向から見ても画面はキレイに見える。しかし、0.86インチの液晶は小さ過ぎた、500円玉で隠れてしまう。
パススルーチェック
コネクタとレセプタクル間のパス状況をチェッカーで確認した。まったくスペック表通りではなかった。VBUS/GND/D+/D-/CC1/CC2しか通っていない。しかもD+/D-が両面点灯しているということはテスター内で短絡されていることを意味している。こんな乱暴なテスターを見たことがない。
参考までにKM003C/FNB58の正当なテスターとしての役割を見て欲しい。
追記
ATORCHに問い合わせをしていたら回答がきた。要約するとKM003CやFNB58のような高級機と千円テスターを同列にするなってことらしい。16ピンを主張する根拠となる回路図も送られてきた。
確かに基板を見るとコネクタは片面7ピンしかないものを使っている。レセプタクルに至っては片面実装のものなので、いずれもプラグ内で導通しているのだろう。電源専用のテスターと割り切って、それ以外の経路に置くことは考えない方がいいだろう。
校正(筆者間違い)
バッテリーからテスターを数珠つなぎして最後を電子負荷装置とした。QC 2.0で9V/0,1,2Aを通した。千円テスターが常に0.9Aほど高い値を指している。常にそうかというと、正値から低い方向の場合もあってテスターとしての正確性にまったく欠ける。いくら安くても大体の値も出ないのであればそれはゴミだ。画像を英文にしているのは、アリエクに返品を申し入れる根拠画像にしたためだ。
これほど安かろう悪かろうは見たことがない。テスターの体をなしていないのはこの個体のみなのか、それとも全部なのか。ATORCHの裁定を待っている。
無負荷時電流値修正
ATORCHから返信がきた。要約すると、あなたそれ無負荷時に電流を調整する機能を変更しちゃってるでしょというもの。え?そんなことをしたか?と思い見直した。
な、なってた・・・。タップ操作が微妙だから画面切り替え時に無意識にやったと思われ。
慌ててゼロクリアして確認をすると問題がなくなっていた。やれ恥ずかし。
ということで、1,000円で十分使えるUSBテスターであった。画面が小さいのと、全ピンパススルーになっていないのが難点だが、それに勝る価格が魅力だ。