前回、あろえチェッカーとFNB58で表示される抵抗値があまりにも違いすぎた。いずれもブラックボックスでの測定値でどちらが正しいか検証できないため、物理的にワイヤーの抵抗値を計測するミリオームテスターを用意した。テスターの正確性も検証し終えたところで3種の方法で試してみた。
A-CとC-CのUSBケーブルに登場していただいた。普段使いのUSBケーブルである。抵抗は温度の影響を受けるのであまり時間を変えずに計測した。
ここで1点誤算があった。購入したミリオームテスターは100mAを導体に流して抵抗を計測する。ワニクリップをしっかりとかみ合わせて0mΩを確認するが、ご覧のように点では接触抵抗の影響が大きくまともな数値が測れない。電気の特性を理解できていなかった。となると、あやのチェッカーのパッドにクリップ先端を押し当てるだけでは計測できないことになる。
せっかくきれいに作ってくれたあやのさんには申し訳ないがご覧の通り、ワニクリップのグリップ用にピンを付けさせていただいた。ピンの上下にワニクリップを付けて0mΩになることを確かめた。
それでは改めて検証してみよう。あやの式はVBUSとGNDそれぞれを計測して合計する。室温22℃で合計10回計測した。
機種 | あろえ | FNB58 | あやの A-C | あやの C-C | ||||||
回数 | A-C | C-C | A-C | C-C | VBUS | GND | 合計 | VBUS | GND | 合計 |
1 | 228 | 324 | 216 | 241 | 333 | 265 | 598 | 363 | 420 | 783 |
2 | 486 | 361 | 235 | 239 | 240 | 226 | 466 | 350 | 412 | 762 |
3 | 361 | 327 | 220 | 239 | 248 | 226 | 474 | 325 | 412 | 737 |
4 | 520 | 351 | 236 | 237 | 228 | 227 | 455 | 319 | 410 | 729 |
5 | 302 | 327 | 206 | 242 | 231 | 227 | 458 | 313 | 410 | 723 |
6 | 310 | 380 | 198 | 236 | 226 | 227 | 453 | 325 | 411 | 736 |
7 | 502 | 352 | 204 | 236 | 220 | 228 | 448 | 321 | 409 | 730 |
8 | 393 | 353 | 204 | 238 | 219 | 227 | 446 | 322 | 412 | 734 |
9 | 950 | 322 | 191 | 235 | 216 | 226 | 442 | 315 | 410 | 725 |
10 | 301 | 327 | 191 | 248 | 216 | 226 | 442 | 335 | 415 | 750 |
平均mΩ | 435 | 342 | 210 | 239 | 238 | 231 | 468 | 329 | 412 | 741 |
標準偏差 | 195.2 | 18.7 | 15.5 | 3.6 | 33.3 | 11.5 | 44.4 | 15.3 | 3.1 | 17.9 |
あろえチェッカー
測定方式は不明だが、作者のXでチェッカー2に抵抗計算を組み込むときのつぶやきを見ているとブリッジ回路で算出できることをアドバイスされている。A-Cの測定バラツキが大き過ぎて、最大で4倍以上の開きがある。なぜこれほどの差が生じるのか不明だ。そしてこれだけ変動するということは平均をとってもあまり意味がない。正値がどれか推定もできないことになる。一方でC-Cはおおむね寄っている結果で正しいかどうかはともかく計測値としては信頼ができる。
FNB58
取扱説明書には差圧法とある。非常に単純な仕組みで、ケーブル挿し込みのありなし前後で生じる電圧と電流の変化から抵抗値を計算するというものだ。前提としては計測中は一定の負荷で電流が流れていなければならない。FNB58のメーカーは定電流を0.5~1Aの範囲にしろといっている。
結果的にはA-C,C-Cとも非常にブレのない測定値であった。しかし、数値があろえチェッカーと大きく違いがある。A-Cに至っては半分程度だ。これは方式上VBUSのみを測定したと考えるべきなのか。
あやのチェッカー+ミリオームテスター
ミリオームテスターの1mΩ単位の正確さは検証済みだ。アナログ的に視覚できるこのテスターが一番正しい値に近いといえるだろう。実際に10回行った測定のブレも小さい。それでもA-CのVBUSはブレが大きい。ただ、A-Cこそあろえチェッカーに近いが、C-Cはとんでもない数字を叩き出した。これは測定方法に問題があるのだろうか。
最終決戦はミリオームテスターのみ
結果として3種とも違う測定値となり、どれが正しいかわからなくなってしまった。こうなったら測定後に実際にケーブルを破壊して、ワイヤーの抵抗値を測定するしかないだろう。普段使いのケーブルではできないので、惜しくないC-Cケーブルを使ってやってみた。
三星電子とあるので一応サムスンのようだが、ホンモノかどうかは不明。コネクタ部分を分解すると、VBUS,CC,D+,D-とシールドの5本が見える。一番太いのが赤でVBUSになる。あろえチェッカーによるとGNDとシールドは接続されているようなのでシールドがGNDの役割を果たしていると思われる。
機種 | mΩ |
あろえ | 179 |
FNB58 | 117 |
あやの | 250+312 |
テスター | 60+70 |
結果はこのようになった。ミニオームテスターで測るためケーブル直接なのでコネクタ類の抵抗が減少していると思われる。それを考慮するとあろえとFNB58のちょうど間ぐらいという何とも中途半端な結果になった。あやの+テスターはどうやら別の原因があってうまく測れないようだ。
最終決戦としたので結論だけ出しておくと、あろえのA-Cにおけるふらつきを考慮すると最も手軽に測れるUSBケーブル抵抗値はFNB58でいいのではないだろうか。