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結局、分解補修したPOWER-Z KM003C

前回、KM003Cのコネクタ部根元を補強するという対症療法を行った。しかし、一度基板から剥がれてしまっている端子部がこのような方法で直るわけもなく、再度症状が出始めたため諦めて中を修復することにした。

 

開腹方法

開腹は比較的簡単で、液晶部分をある程度温める。液晶部枠の一部が接着されていて、温めることで剥離しやすくするためだ。スマホもほぼこのような粘着でハウジングされていることが多い。頃合いを見て吸盤を使ってじわじわと浮き上がらせるように少し左右に振ったりしてケースと液晶を引き離していく。作業していると4辺のどこかが浮いてくるので一カ所でも隙間ができたら爪かプラ板を挿し込んで攻略していく。POWER-Zのロゴがある方にフレキシブルフラットケーブルがあるので、勢いつけて剥がして破損しないように注意する。とにかくあせらずじわじわとやるのがコツで、粘着剤をハウジング側に残すように液晶パネルを開ける。この写真では基板ごと抜けているが、実際には液晶部のみがフラットケーブルにつながったまま外れる。

基板表

コネクタ部の補強のみであれば基板まで取り外す必要はない。液晶部を開けて見える部分を再はんだして樹脂固着して戻せばいい。わたしの場合は基板裏を見たくてすべて分解をした。基板への接続が見えるのはコネクタの片側だけだった。剥離しているのはこの部分になる。基板は'22.9.12製造のものだ。

KAMCAPの3.0V、0.35Fのスーパーキャパシタが目立つ。これで電源がなくても5秒間駆動しているのだから大したものだ。

基板裏

実装面は反対側のようなので取り外して確認した。コネクタのこちら側は左右がしっかりと固定されていてピンに負荷が及ばないようになっている。2つあるレセクタプルもHIDは4点止め、IN/OUTは2点止めだが別にホールドの板を取り付けてしっかりガードされている。唯一の弱点が基板表のコネクタピン接合なのがよくわかった。基板裏への対策は不要なので実際の補修ではここまで開けなくてよい。

この際だからしっかりとパーツを確認しておく。一番大きなHuada HDSC HC32F460マイクロコントローラが目に付く。200MHzで動作するCortex-M4 CPU(浮動小数点サポート)をベースに、512KBフラッシュメモリ、192KB SRAM(32KB高速RAM含む)、4KB RRAMを搭載している。基板というのは見ていて飽きないから不思議だ。

ハウジングに接着剤が残っているのがわかる。うまく残せていれば温め直すだけで再接着可能だ。

コネクタピン剥離の確認

このように基板表はコネクタの左右がホールドされる仕組みになっていないので浮いてしまっている。

'23.11製造のものを開けてみると対策のつもりなのか、左右にはんだが厚盛りされている。しかし、基板に密着しているわけではなく、反対側のはんだとブリッジさせているだけなので効果は薄いだろう。このため、ピン部分を樹脂で固着させて、さらに前回の外側コネクタ根元を同じようにホールドする2段階補強を行った。

不具合の確認

ケーブルチェッカーの本来の使い方ではないが、240Wに耐えられるテスターで微弱な電流で破損することはないだろう。コネクタを上下させることで片側の列で断線しているのがわかる。VBUS/GNDは反対側と共用なので見た目は通電されているように見えるが実際には同じように剥離している。ピン根元を押さえながら、再はんだで基板に着けたら同じ方法で通電チェックを行い、問題がなければ樹脂で固着させて対策を行い戻していく。

KM003Cは非常に有用なツールであるがゆえに使用頻度が高い。また、コンパクトなのでよけいにコネクタには負荷がかかるだろう。長く使いたい人は、転ばぬ先の杖で購入したら早めに補強を行って使うのがいい。

POWER-Z KM003C USBテスター PCソフトウェア取扱説明書

ハード編に続き、ソフト編を案内する。

準備

KM003Cは単体でも使えるようになっているが、PCと接続してPCソフトウェアを使用することでさらに存在価値が増す。PCソフトウェアでしかできないことも多い。KM003Cユーザは使ってみて欲しい。

KM003CのPC接続

Windows 10/11であれば、KM003CのHIDポートとPCのUSBポートを接続すればドライバは自動的に組み込まれる。PC側はUSB-AポートでもUSB-Cポートでも構わない。データ通信が行えるケーブルで接続をする。Windowsにセットアップされたらデバイスマネージャーで組み込まれたか確認する。KM003Cは同一PCに複数台接続することができる。

ソフト起動

ソフトはインストーラー版とポータブル版がある。中華製ソフトをインストールしたくない人はポータブル版で直起動すればいいだろう。どちらも起動後の動作に差はない。現時点のバージョンは2023.7.15版2.3.0 QT 6.4.2になっている(2023.12.20現在)。

インストーラー版
https://chargerlab-1255476733.cos.ap-guangzhou.myqcloud.com/POWER-Z.zip

zipファイルを解凍してできるSetup.exeを実行して英語版でインストールする。自動作成されるPOWER-Zのショートカットから起動する。

ポータブル版
https://chargerlab-1255476733.cos.ap-guangzhou.myqcloud.com/POWER-Z2.zip

zipファイルを任意の場所にフォルダ付きで解凍し、Mtools.exeを起動する。

起動画面

起動後のソフトは3つのエリアとタイトルバーのメニューボタンに分けられる。

メニュー

①ソフトについて、更新チェック、言語(中国語、英語)

②機器リスト更新、仮想機器作成

③データモード

④PD/UFCSアナライザ

⑤描画メニュー

ツールバーON/OFF

⑦起動画面変更/急速充電プロトコル制御

⑧チャートエリア切替

⑨リアルタイム記録

⑩ストレージデータ

ファームウェア更新

機器エリア

実際に接続されたKM003Cは紫で表示される。シミュレーション用に作成した仮想機器は緑で表示される。機器リストをダブルクリックするとデータエリアが分割される。同時に表示できるのは4つまでで、5つ目を表示させようとすると強制終了する。

仮想機器は当然測定できないので、保存されたデータを読み込んで表示比較するという使い方になる。現時点では仮想機器でも計測開始ができてしまうが、意味のない数字が取られるだけなので、充電データやPDアナライズ結果を保存したビューアとして使うようにしよう。この使い方であれば実機を接続する必要がない。

データエリア

デジタル表示

最上段に表示されるデジタルは本機ダッシュボードに表示されるものと同じになる。VBUS(電圧)、IBUS(電流)、PWR(電力)、DP(D+)、DM(D-)、CC1、CC2、T1(温度)

デジタル表示更新速度のサンプリングレートは⑨▶がオフラインの場合は本機の設定値、オンラインの場合はPCソフトウェアのサンプリングレートSPS値が有効になる。

グラフ描画

VBUS、IBUSはデフォルトとして強制的に表示される。⑨▶オンラインにしてDP/DM、CC1/CC2、TEMPは同時に表示ができる。オプションとしてCHARGE(放電容量Ah)、ENERGY(エネルギーWh)、POWER(電力W)、E.D.(比率による充電速度の目安%)の4つはTEMPと排他使用である。

グラフ上にマウスポインタを当てると詳細データがサブウインドウで表示される。

描画サブメニュー

①チャート2画面表示

 多種のデータを同一表示できるので見にくくなる場合はこの機能を使うとVBUS/IBUSをメインとして、それ以外のデータを別グラフにして表示できる。

②電流に絶対値を使う

 直流なのでほぼメリットはないと思われる。デフォルトオンでよい。

③統計表示

 計測中のAh(放電容量)、Wh(電力量)をグラフ下部に表示するかしないかを設定できる。

④電圧電流極値表示

 なぜか英語表記されていない。計測中のVBUS/IBUSの最大最小値を表示する。

⑤高サンプリングでの高速表示

 これも英語表記されていない。オンオフで表示の変化がよくわからなかった。

⑥2時間軸の差分測定

 オンにすると2本の時間軸が表れる。それぞれ移動させることで、任意のT1-T2間VBUS/IBUS増減を確認できる。

⑦インポート

 エクスポートで作成されたファイルを読み込む。

⑧エクスポート

 計測完全停止中に機能する。出力されるのはグラフに関係なく「ElapsedTime,Unix,VBUS,IBUS,DP,DM,CC1,CC2,TEMP,CHARGE,ENERGY,PWR」すべての値になる。

⑨イメージ保存

 計測中でも出力できる。現在画面に出ているグラフ部分のみを指定の解像度で出力する。

⑩パラメーター設定

 グラフに表示する項目の色を設定できる。VBUS/IBUSは線の透過度と太さも設定ができる。

ツールエリア

チャートとFWアップデートのタブがある。⑥ツールバーON/OFFでこのエリアの表示を消してグラフを広く見ることができる。

チャート

-オンラインデータ

でPC接続されたKM003Cのコントロールが可能になる。

コンディション項目の上段は指定mAを下回ったときに計測を自動停止する。下段の秒数は条件を満たした後、何秒計測するかをしている。

-Auto-stop after certain conditions:チェックで自動停止機能オン

-Start recording with system time:チェックで計測をシステム時間(実時間)とする

-Save While Recording:チェックで計測中は保存する。千~1千万ポイントと、保存ドライブとフォルダ名が設定できる。

サンプリングレートを秒あたり1~1kサンプル数まで4段階で選ぶ。キャッシュは1~2000MBで2~5555時間(1SPSの場合)の記録容量を設定できる。

-オフラインデータ

KM003C内に保存されたデータを参照およびグラフ化できる。リスト名を変えたり、データの削除、消去ができる。ここで行った操作は直ちにKM003Cのメモリ情報を変更する。

-ログデータ

今のところ利用されていない模様。

ファームウェアアップデート

インターネット回線に接続されている場合は最新のFW情報が表示される。を押すとローカルに保存されたFWを選択して書き込めるが、基本は最新FW横にあるチップアイコンをクリックすれば自動的に書き換えてKM003Cが再起動する。

PD/UFCSアナライザ

データエリア上部の④をクリックするとPDアナライザが起動する。▼でUFCSアナライザに切り替えることができる。本サイトではPDアナライザのみを解説する。

①ファイルオープン

 保存したPDアナライザデータを読み込む。

②セーブファイル

 PDアナライザデータを保存する。

③削除

 取得済みのPDアナライザデータを削除する。

④GOOD_CRCデータ消去

 表示に不要な正常CRCを画面上消去する。

⑤スタート

 PDアナライザを開始する。

⑥チャート

 PDアナライズ中のVBUS/IBUS/CC1/CC2の推移が見れる。充電開始から充電終了までどのようなPD通信が行われているか視覚的に見ることができる。

⑦データアナリシス

 詳細を見たいパケットを選択してData analysisタブをクリックすると、SOP*通信の中身を見ることができる。

⑧サブウインドウ削除

 ×を押すと下部ウインドウを削除して全画面でPDアナライザ情報を見ることができる。

ソフトについて

タイトルバー①ではPCソフトウェア自体の確認ができる。

About

ソフトのバージョン情報が確認できる。

更新チェック

インストールバージョンと最新バージョンの確認ができる。新しいバージョンが出ている場合は↓をクリックして更新できる。

Language

中国語、英語の切り替えができる。

その他

タイトルバー⑦では起動画面変更と急速充電プロトコル制御プログラム起動ができる。

起動画面変更

グリーンハートアイコンのCustomize starting-up pageをクリックすると、起動画面の書き換えメニューが起動する。本機は240×240ピクセルなので、等倍のデータを用意すると縮小されず全画面で表示される。Transparent Imageのチェックを付けると200×200ピクセルとなり透過枠が設定される。ごみ箱をクリックするとKM003C内の画像が消されて、デフォルトのPOWER-Zテキストが表示される。

快充协议(急速充電プロトコル

別プログラム(PDM)が起動する。これにより、メインソフトで描画、別ソフトで管理ができるため、KM003Cのボタンを操作せず充電器テストなどが行える。

PDM起動後に①をオンにする。②設定でKM003C内の設定を変更できる。③はPDMで送信できるコマンドリストのPDFが起動するが、中文しか用意されていないので和訳を用意した。よほどマニアックな使い方でなければ直接コマンドを送信することはないだろう。ほとんどがマウスで操作できるようになっている。④はPDM情報を確認できる。

中央の⑤をクリックすると、プロトコルリストが表示されるが必ずしも接続充電器の情報が反映しているわけではない。

PD

Power Deliveryをクリックして⑦で詳細設定ができる。クリックすると直ちに電圧・電流が反映するのでKM003Cの出力ポートに挿す機器には十分注意する。

PDMの制御下に入るとKM003Cアプリケーションメニューの本機アクセスが制限される。

 

POWER-Z KM003C風USBテスター ATORCH C13Pをレビューする

似て非なるもの

まったくもって中華通販はおもしろい。お気に入りのUSBテスターKM003Cになんとなく似ている製品があった。AliExpressでは2023年10月23日から5,700円前後で扱われている。KM003Cが1万円前後で売られているのを考えると4割ほど安い。

調達

メーカーは電子負荷抵抗でおなじみのATORCHになる。AliExpressの扱いはATORCH公式ストアのみとなっている。メーカーのホームページではAI女子が製品紹介を行っている。公式では天猫(ティエンマオ)を紹介していて、ここだとUSBケーブルが付いて8,600円で売られている。センサーは安く、400円~1,000円で販売している。アリエクで25個、天猫で100台の販売実績というところを見ると普及にはほど遠い。本家KM003Cとどれだけ違うのか、どれだけ似ているのか比較するためにアリエクで購入してみた。

事前準備

あらかじめ取扱説明書に目を通しておこうと思ったらこのマニュアルに行きついた。ようはマニュアル作ってません、製品内で説明ポップがあるからそれを見よということらしい。

機種 Juwei C13P POWER-Z KM003C
基本
サイズ 35.4×10×35.4mm 35.5×8.6×36.4mm
ディスプレイ IPS高解像度フルカラー IPS高解像度フルカラー
画面サイズ 240×240ドット 240×240ドット
重力センサー
電子水準器  
スーパーキャパシタ(瞬停対応)  
eMarker検出 △フェイク数値
電力系機能
電圧 0~50V 公称値 0~50V
電流 0~6.5A 公称値 0~6A
電力 0~325W 公称値 0~300W
急速充電トリガー QC 2.0,QC 3.0,ClassA/B,AFC,FCP,
SCP,HISCP,VIVO5V4.5A,
VIVO10V2.25A,VIVO11V4A,
MTK PD,PPS
PD 2.0/PD 3.0/PPS/EPR/QC 2.0/
QC  3.0/AFC/FCP/SCP/VFCP/
UFCS/VOOC/Xiaomi

(VOOC/SVOOC)
急速充電自動検出 APPLE,SS2P0,BC1P2,
TYC,QC 2A,QC 3A,
QC 3B,AFC,FCP,SCP,HISCP,
VOOC,SVOOC,VOOC 3.0,
VOOC 4.0,VIVO,VOVO2(Z3 27W),
VOVO3(IQOO 44W),MTK,PPS,
PD3/PD2
PD 2.0/PD 3.0 PPS/
PD 3.1 EPR/QC 2.0/
QC 3.0/QC 3+/QC 4+/
QC 5/AFC/FCP/SCP/
VFCP/UFCS/APPLE 2.4A/
SAMSUNG/Xiaomi/VOOC/
MTK PE/SFCP
ADコンバーター
急速充電プロトコル自動検出
急速充電プロトコルトリガー
PDO検出
Type-C充電検出
プロトコル識別
電圧電流曲線
D±,CC1/CC2論理曲線
高速電圧リップル
バッテリー容量検出
バッテリー容量計算
その他
ケーブル抵抗検出 開発中
データストレージ 10本 4MB
Lightning MFi情報表示   開発中
ケーブルシミュレーション  
Apple Charger情報表示  
拡張アクセサリー
PWM信号発生  
Bluetooth接続  
Wi-Fi接続  
パルスオキシメーター 開発中  
脈拍心拍数  
温湿度  
オシロスコープ  
気圧高度  
空気品質  
ホルムアルデヒド濃度  
外付けバッテリー 開発中  
PCソフト
Mac OS   開発中
FWアップデート
システム設定
充電検知
プロトコルトリガー 開発中
急速充電プロトコル自動検出 開発中
バッテリー計算 開発中
PD/UFCSプロトコル解析  
SOP/SOP'/SOP"通信  

公開されているデータで2機種を比較してみた。本来のUSBテスターとしての機能はほぼ互角。KM003Cで未対応のケーブル抵抗測定メニューが組み込まれているのはよい。水準器は最近はスマホでも使えるが、USBテスターになぜ必要なのだろうという疑問はある。

そして豊富なセンサー類を含めたオプションがすごい。これは本当にUSBテスターでやらなければならないのだろうか。オシロスコープは持っていないので使えるものなら興味はある。

PCソフトはほとんど未完成である。これはKM003Cの完成度と比べようがない。

実物確認

クリスマスイブに購入して6日で到着した。年末であるにも関わらず最近のアリエク配送は早い。見た感じ、画面や操作のUIはそっくりである。KM003Cのケースはしっかりとしたハウジングなのに対して、いかにも分解してくれと言わんばかりの構造だ。USBテスターにはこのタイプが多い。液晶部にボタン説明を入れているのはよい。

Type-A→Type-Cケーブルが同梱しているのはHIDインターフェイスのCレセプタクルCC1/CC2が5.1kΩプルダウンされておらず、C-Cケーブルを使うとコールドソケットのまま通電されないためだ。なぜこのような基本的な設計ができていないのだろうか。

そして缶ケース表面に貼られているユーザマニュアルのQRコードリンク先にはC13Pのマニュアルなどアップされていない(2023.12.31現在)。

せっかくなので分解して中を見てみることにする。光沢のある裏面を取り外すと光沢のない板がサンドされていた。この光沢のない板の裏側も同様のプリントがされている。なんのためだろうか。

メインのチップは見られたくないのかマスクされている。32MHzのクオーツが使われている。上に見えるType-Cレセプタクルになぜ5.1kΩを入れなかったのか。

液晶側は部品が実装されていない。

基本的なレイアウトはKM003Cと同じにしてある。ボタンのレイアウトも一見同じだが、実際のオペレーションはまったく違った。

基本操作

取説なしでも使えるんだ!という開発者の思いを尊重して、そのまま使い始めてみよう。

アップデート

FW1.1.1で到着したのでまずは最新のFW1.1.2にアップデートした。PCにつないで初めて機器のシリアルが073263であることを知った。一体何番からの通しなんだろう。

アップデータはあらかじめサイトからダウンロードしておいて読ませる方式である。KM003CはPCソフト内で最新更新情報が見れて指定をすれば勝手にダウンロードしてきてアップデートが終わるのに比べるとずいぶん原始的だ。

今のところ唯一使える機能はこのグラフ表示だけ。X軸は現時刻になっている。プロットのタイミングを変更することはできないし、今後発展の可能性もなさそうな作りである。

設定メニューはほぼ中国語で意味不明、機器には英語版FWが入っているので英語でしか表示できない。

ひょっとしてと思い、KM003Cアプリを立ち上げると認識はするものの接続はできなかった。残念である。

起動直後

HIDポートに電源をつなぐと、ATORCHのブート画面が出たあとにこの状態で起動する。USBテスターなのでこの挙動はまだ許容できる。この画面は機器回転による自動ローテーションをサポートしている。

ここからメインメニューに戻る方法は[M(enu)/OK]ではなく、↶ボタンである。◀▶を押すと5秒でスクリーンオフになる。

メインメニュー

↶でメインメニューに戻ってもすぐに操作しないと3秒カウントダウンが始まり、元の起動画面に戻されてしまう。

全部で3画面あり、キャプションが小さいので老眼にはつらい。アイコンである程度識別できるぐらいにしておかないといけない。1画面目は電気系統、2画面目は拡張アクセサリー、3画面目はその他である。

設定も3画面ある。英語なので読めばわかるだろう。この画面は回転しない。本機はほとんどの画面で回転をサポートしていない。回転は起動直後のダッシュボードとメインメニューぐらいだろう。ひとつひとつの作りが雑なのである。

ダッシュボード

KM003Cと酷似した画面だが、それぞれの数値の大小がKM003Cは背景色濃淡で表すのに対して、こちらは右側のバーで表現している。

充電時に検出したプロトコルを表示するが、まず正しく出ない。まったく使い物にならない。

数珠つなぎにするとよくわかる。プロトコルを読めてないし、電力の向きは正しい方向を指していない。数値はどちらも問題なさげだ。

充電プロトコル検出

USBテスターとして必須だろう。警告文は細かすぎて読めない。検出はできているが、KM003Cのように検出結果にカーソルを移動させて詳細を見る機能はない。PDの中身も見れない。

PD 3.1 EPR対応としているが、EPRのeMarker入りケーブルを用意しても読めなかった。これは致命的な問題なので早急にFWで対策して欲しい。KM003Cのようにケーブル偽証はできないので、レセプタクルにeMarker入りのケーブルは必須である。

急速充電トリガー

トリガーはEPRを除きうまく動作するようだ。

電子負荷抵抗でも設定された電圧・電流が計測された。

電気容量計測

10本のデータが記録できる。FNB58のような作りだ。

グラフ表示

VBUSリップル波形の表示もサポートしている。

水準器

こんな機能よりもまともに全画面でローテーションをサポートして欲しい。

eMarker表示

まともに動作していない。まず両面対応していないので読めない場合はType-Cのコネクタ裏側を試さなければならない。また、コネクタにも給電しないと読めない。eMarkerがあったら中身は読まずにこの表示をしているような気がする。KM003Cの表示とまったく違う。これではEPR対応しているわけがない。

ケーブル抵抗測定

KM003Cで未実装の機能が組み込まれているが、これを試すにはCレセプタクル直結の負荷抵抗が必要だ。計測方式としてはFNB58と同じになる。

総評

すべてが中途半端、とりあえずKM003Cに寄せて作って販売してみたという感じがする。機能、操作性、内部FWの未完成、PCソフトの作り込み、すべてが未完成過ぎていいところ2,000円程度のUSBテスターである。豊富なアクセサリーが何のためにあるのかもまったくわからない。KM003Cの足元にも及ばないので買う必要はまったくないガジェットであった。