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週アス紹介のケーブルは本当にUSB PDの有無を判別するのか

日本初のマイコン雑誌I/Oの翌年に刊行した月刊アスキー、日本のパソコン創世記を支えたのは間違いなくこの2誌である。わたしはI/O派であったが、のちに孫氏の日本ソフトバンクOh!FMに乗り換えた。

 

そんな折に週刊アスキー(現在はWEBのみ)で気になる記事を見かけた。アキバショップの取扱品でワット数が表示できるUSB4ケーブルだという。このワット数表示のケーブルにはよい思い出がない。1つはすぐ不灯になり機能せず、もうひとつはスペックはそこそこだが、240Wという表記をしながらその性能を持たず、PD表示もニセモノだった。今回紹介の一品は後者のものに非常に似ていた。いや、まんま同じではないのかと目を疑うぐらいだった。

 

しかし、アキバショップで堂々と240WとPD有無がわかるとPOPし、天下のアスキーライターが書いた記事なので改善されたのかと思った。価格も3,300円とそれなりの値段なら期待も高まるというものだ。

 

紹介記事一覧

週刊アスキー
https://weekly.ascii.jp/elem/000/004/193/4193810/

ASCII.jp×デジタル
https://ascii.jp/elem/000/004/193/4193810/

エルミタージュ秋葉原
https://www.gdm.or.jp/crew/2024/0408/533713

 

写真が使いまわされているのでいずれも同じライターが書いたものと思われる。Shenzhen Unnlinkブランドの製品として紹介されているので何やら箔がついた製品のようだ。今までわたしが買ってきたパチモノとは違う感じがする。

 

早速アリエクのunnlink Official Storeで同じものを購入してみた。

火曜日朝に注文して同週金曜日夕方に到着するという最速配送だった。これなら秋葉原まで出かけなくても十分だ。しかも送料込み1,200円であった。

オフィシャルショップで買ってもパッケージは前に買ったノーブランドとほぼ同じである。さらに、シュリンクした部分に外からシールが貼ってあるだけで、どう見てもこれは仕入れ品ではないか。開封前から嫌な予感しかしない。

中のケーブル材質、表示部分、コネクタ内部を比較したが以前のモノと見た目はまったく変わらない。

まずKM003CでeMarker情報を読み出す。ノーブランドのものとまったく同じ表記だった。まぁこれで違っていたらかえって驚きなので安心した。

配線はUSB4なので全線配線は間違いない。これはノーブランドも同じだ。ただし、複数あるVBUS,GNDはそれぞれコネクタ内で短絡されているのでVBUS,GND線がそれぞれ4本あるわけではない。

ワット数表示はほぼ正確な数字を表していた。

しかし、やはりPDマークはなんちゃってであることに違いはなかった。CC端子のない電源元からの供給でも通電されればPDマークは点灯した。プロトコルなんて読んではいなかった。PDの有無などわかりようがないのである。

さらに薄っすら見えるディスプレイはノーブランドのそれと変わりがなかった。つまりこのケーブルの最大表示は199Wまでである。

 

ケーブル抵抗値をいつもの3機種で測ってみた。ディスプレイがある分だけ負荷があるので通常の高性能ケーブルよりは抵抗値が高いようである。

  • ADUSBCIM USB CABLE CHECKER 2:270mΩ
  • ALIENTEK UT70:245mΩ
  • FNIRSI FNB58:215mΩ

おそらくUT70の値が一番正確だと思われる。しかし、天下のアスキーが裏も取らずになんちゃってケーブルを紹介するのはいかがなものだろう。これでは西和彦氏が浮かばれない(死んでないw)。

 

 

 

格安高性能USBテスター ALIENTEK UT70をレビューする

UT70は券売機にあらず

ALIENTEKと聞けばDP100というぐらい、小型の安定化電源で注目を集めている。あるいはT65というPD対応のはんだごてをイメージするかもしれない。そのALIENTEKからUSBテスターが発売されていた。アリエクでは年明けから扱っている。

国内ベンダーではスイッチサイエンスが2月28日から発売している。本体2,980円+送料200円なので、アリエクの値引き価格とほぼ変わらない。KM003Cも発売してもらえないだろうかと思う。

3月上旬に入手してからしばらく触れなかったが、ようやく時間ができたのでレビューしてみる。

実物確認

ATORCH C13Pとまったく同じ窓開き缶ケースに収まっていて、ケーブルはHID用にUSB Type-A(2.0)→Micro USB Type-B(2.0)が同梱されている。HID端子はKM003Cと同様にそろそろType-Cに統一して欲しい。

今までのテスターと違うのはしっかりとした紙の取扱説明書が同梱されていることだ。この辺はメーカーのポリシーが表れていて好感が持てる。

外部インターフェイスはFNB58とまったく同じ構成になっている。A端子が2.0の4ピン+3.0の7番ピンをサポートして、DASHケーブル対応のところまで同じだ。

ただ、KM003CのようなC経路に置くような使い方は電源系以外できない。もっともこの使い方ができるのはCの24ピンをスルーさせているKM003Cぐらいで、大半のUSBテスターは電源系のみのサポートなので、例えばディスプレイポートオルタネートモードで動作しているモニタの経路において電力情報を見たり、PDパケットを読んだりする使い方ができないのは残念だ。

そもそもUT70はPDパケット読み取りに対応していない。FWで可能と思われるのでぜひ対応してもらいたい。

基本スペック

3千円テスターで196WまでのPD 3.1に対応している。取扱説明書もしっかりしたものが用意されているのでいつものように機械翻訳をベースにした和訳版を用意した。

ダッシュボード

メーカーはこの名前で呼んでいないが他社に合わせて統一しておく。USBテスターとしてもっとも基本的な電圧、電流(向き)、電力が表示される。加えてD+,D-の電圧とパワーバンクモード作動アイコンがある。

そしてモニター時の急速充電プロトコルと設定電圧表示、これが正しく表示されれば無敵のテスターとなるが残念ながらそうはならない。メーカーも取扱説明書で長文の言い訳を記述している。識別精度はKM003Cのレベルに達していない。

パワーバンク

このパワーバンクはKM003Cのスーパーキャパシタ的なものかと思ったらそうでもなく、導通が50mA以下で給電が落ちないように定期的に300mAの負荷を疑似的に加えるものだった。テスターのためではなく、ソース側へ配慮した機能になる。

パワーバンクモード オフ
20mA程度の負荷ではバッテリーが30秒で供給を停止する

パワーバンクモード オン
この機能を使うと設定時間ごとに300mA負荷をソース側に与えてバッテリーは2分経ってもダウンしない

波形表示

VBUSの電圧電流ととD+D-の電圧の推移がグラフで表示される。更新スピードは中ボタンで変えられる。ただ、画面が小さいのと、スケールが4段しかないのでこの機能はパソコンで使う方がいいだろう。

データ記録

バッテリーに対してどれだけの電力が蓄えられたか、またバッテリーからどれだけの電力が放出できたかを記録するものでほとんどのテスターが有している。本機は4グループ各10200ポイントが記録できるので、1秒インタバールとすると1グループ2時間50分の記録ができる。最大の2分インターバルにすると約2週間の記録ができる。
容量偽装バッテリーの判別やスマホのバッテリー劣化をチェックするのに有効だろう。

急速充電プロトコル検出

USBテスターを買ったらまずやってみたい機能がこれだ。自分の持っているUSB充電器はどんな充電規格に対応しているのか、そのポテンシャルをすべて引き出してみることができる。本機は以下のプロトコル検出をサポートしている。
BC 1.2、QC 2.0、QC 3.0、PD 2.0、PD 3.0、PD 3.1、Huawei FCP,SCP、Samsung AFC、MTK PE、VOOC、VIVO VFCP、APPLE 2.4A
PD 3.1まで対応しているが28Vが本機の上限なので28V5Aの140Wまでが実力値となるだろう。また、KM003CのようなE-Markerの偽証機能はないので必ず必要なケーブルを用意する。検出自体はCポートのIN/OUTどちらでも行える。

トリガー

これはあまり使う人はいないかもしれない。例えば100WのUSB充電器を買って定格最大の100Wで1時間連続使用をしてどれぐらいまで筐体温度が上がるのか。このテストをしたいとき、テスターが充電器に対して100W必要という情報を常に与え続ける。なおかつ、電子負荷装置などを用意して100Wを定量的に消費できる環境を揃える。電子負荷装置側に一部トリガー機能を持つものもあるが、テスターを使うとさまざまなプロトコルで電力を取り出せるのが魅力だ。本機は以下のトリガーをサポートしている。当然充電器側がこのプロトコルを持っていることが条件だ。
QC 2.0、QC 3.0、PD 2.0、PD 3.0、PD 3.1、Huawei FCP,SCP、Samsung AFCVIVO VFCP

E-Marker情報読み取り

Type-Cのコネクタ内に内蔵されているE-Markerというチップの情報を読み出す。表示されるのは一部の情報のみだが、最低限必要な情報はサポートされている。検出されない場合は赤字のerrorとなる。

DASHケーブル情報読み取り

一部中華製スマホで使われる急速充電ケーブルはPDを使わず、USB Type-A(2.0)なのに3.0で追加された5~9ピンのうちの7番ピンを識別用に使用する特殊ケーブルになっている。本機はそのケーブル情報を読み取ることができるように7番ピンを持っている。

ケーブル抵抗測定

ケーブル抵抗値というとUSBケーブルチェッカー2がおなじみだ。2端子挿してスイッチを入れるだけのお手軽さが売りで利用者も多い。しかし、どうも測定値が安定しない。本ブログではケーブル抵抗に関してかなり時間を割いて取り上げている。UT70はスペックによると高精度合金によるサンプリング抵抗を内蔵している。これを使用した差圧法で算定する。必要なものは測定したいケーブルと500mA以上の電子負荷装置。何回かテストした範囲では2A程度与えた方が正確な数値が出るようだ。

 

以前作成した200mΩ+接触抵抗の標準抵抗原器に再登場してもらう。

公正を期すため、各機種で順番に1回ずつ計測する、を10回繰り返すことにする。

機種

ALIENTEK

UT70

FNIRSI

FNB58

ADUSBCIM
USB CABLE CHECKER 2
回数 A-C C-C A-C C-C A-C C-C
1 281 254 265 212 414 323
2 263 253 291 215 430 322
3 264 253 263 225 338 312
4 261 252 300 208 444 322
5 313 253 289 215 468 306
6 274 253 298 199 322 309
7 373 246 401 198 429 310
8 406 259 347 204 398 309
9 385 248 418 198 324 312
10 465 267 341 197 508 309
平均mΩ 329 254 321 207 408 313
標準偏差 69.5 5.5 51.3 9.0 59.4 6.1

傾向としてはどれもC-Cケーブルの精度が高く、A-Cケーブルは信頼性がない。FNB58の200mΩを切るというあり得ないデータからすると、UT70のC-Cケーブルが一番正値に近いのではないだろうか。

画面の向き

自動ローテーションはされず設定により正逆どちらかにして使うことになる。ATORCHの千円テスターが対応しているので何とか搭載して欲しかった。

パソコンソフト

詳しいことはユーザーマニュアルに譲る。1画面で構成されていて非常にわかりやすい。現時点ではネット経由でのアップデートをかけるとエラーになる。

メーカーに確認したところオンラインアップデートは中国以外ではできないとのこと。さりとて最新FWを公開しているわけでもない。

今後に期待

E-Markerが読み取れるのだからPDパケットも読み取れると思う。KM003Cと同じくパソコンソフトだけの対応でいいのでファームウェアの改修で実現して欲しいものだ。

それにしても近年の高性能USBテスターには目を見張る。今後も目が離せない。

格安サーモグラフィをレビューする

プロローグ

今まで充電器の耐久試験を行ってきた。定格最大で出力をして1時間経ったときの筐体温度はいかほどか。手で触ってヤケドしないレベルなのか、あるいは高温検知で自動停止するのか。ペンタイプの温度計を1,000円で購入したが、点でしか計測できないので筐体のどの部分が最高温度なのか手動でスキャンして探る必要があった。面でとらえるにはそれなりの投資をしなければならない。

予算は5千円程度

製品としてサーモグラフィをAmazonで検索すると2万円~10万円ほどのものが多く登場する。スマホに挿すタイプでもほぼ同じぐらいだ。もう少し安価なものがないのか。

サーモグラフィの値段を大きく左右するのが心臓部である遠赤外線温度センサーアレイだ。温度を見るための目がどれだけ細かくなっているかで値段が決まる。安価なものでは8×8なんてものもある。センサーの正面に置かれた正方形の板を8×8=64分割してそれぞれの1マスについて温度を計測できる機能を持っている。ちょうどオセロ盤と同じ仕様だと考えればいい。スマホのカメラで考えると64画素ということになる。先ほどの数万するサーモグラフィはこのセンサーが概ね320×240や240×240になる。出始めのころのデジカメ画素数程度だ。それでも5万~7万画素はある。

近接なら十分実用の768ピクセル

今回は妥協に妥協を重ねて、32×24ピクセルのセンサーモデルを購入した。ベルギーに本社を置くメレキシス(Melexis Technologies NV)というメーカーのMLX90640ESF-BABを使用している。一応昔のデジカメの形状をしていて5,350円だった。解像度は768画素なれど、被写体となる充電器をそれなりの近さで撮れば768分割してできる温度計測は十分と言える。

製品仕様

名前 サーマルイメージャー
外装素材 FR4エポキシ樹脂
バッテリー 200mAhリチウムバッテリー
赤外線センサー MLX90640ESF-BAB
センサー解像度 32×24ピクセル
ディスプレイ 1.8インチTFT
画面解像度 160×128ピクセル
温度測定範囲 -40~300℃
温度表示(+の色) 最高(赤紫)、中心点(白)、最低(緑)
測定精度 ±2℃ (中心面積0~100℃)
動作温度 10~50℃
作業湿度 70%以下
リフレッシュレート 8Hz
視野 水平55°垂直35°
キャリブレーション 不要
充電仕様 USB Type-C 5V/1A
作業時間 4時間以上
Uディスク容量 16MB(画像最大90枚、BMP形式)
撮影時 要15秒保持
データ転送 USB Type-C(コピーと削除が可能)
サイズ 66×47×20mm
重量 70g
付属品 USB Type-Cケーブル(A to C)

製品確認

パッと見た目は自分が使っているユピテルのドライブレコーダのようだ。スカスカなのか異常に軽い。真ん中の電源ボタンを長押しすると電源が入って計測モードにはいる。

やりたかったUSB充電器を1時間負荷かけて確認した。撮影ボタンはやはり真ん中のボタンである。押すと赤い四角に×が出てエラーになる。あとでわかったのだが、使い始める前にパソコンにつないで内蔵Uディスクをフォーマットする必要がある。フォーマット後は撮影が可能になる。∧・∨でUディスク内の画像を送って見ることができる。

画像の見方

下部の温度は左から最高温度、中心部温度、最低温度を指している。十字の位置が赤紫、白、緑でそれぞれの場所になっている。

センサーの解像度32×24がどの程度に見えるのか具現化してみた。概ねの輪郭はわかる。

最高温度の位置がわかっているので、ペンタイプで測ってほぼ同じような値だった。

Uディスク

パソコンからはドライブ内のIMAGEフォルダとしてカメラ内の撮影済みファイルを見ることができる。320×240ピクセルの画像で、ファイル名は通しになっているようだが、規則性はよくわからない。電源を入れてからの通算の秒数だろうか。

これから充電器の耐久テストも少しはかどるだろう。