目指すUSBケーブル判定機
前回、UCC3のレビューで訳ありケーブルのチェックでUCC2の挙動がおかしいし、UCC3もチェック結果の表示が完全でないとした。しかし、その後に思い直してこれはそもそも機器の設計思想によるものではないかと考えた。
ひょっとしてUCCxはこういう考えで作られたのではないか。
- 引き出しの肥やしになっていたUSBケーブルが充電専用なのか、データ通信もできるのか
- このType-CはUSB 2.0なのか3.2か
- 電圧降下が著しく、このケーブルの電源ライン抵抗はどれだけあるのか
ここまではややビギナー的、表面的な用途になる。それに対して、以下のような目的を持つとマニアックで専門的な用途にすり替わる。
- 通信が途切れるのは断線が原因ではないか
- ピンの中の金属が少し曲がっている気がする、うまく信号は流れているのか
UCCxが目指すのは前者に絞っているのではないかと考えた。
UCC2マニュアルの記載にある機能は以下の通りで、どこにも断線チェックは書かれていない。
- ケーブルワイヤ結線状況のチェック
- タイプCケーブルや変換アダプタのプラグ内蔵抵抗値の確認/Emarkerチェック
- プラグシェルの地絡確認
- ケーブルの抵抗値の確認
これがUCC3だと断線の確認ができるとしてしまっている。
■ケーブルチェックモード
- USBケーブルのワイヤの線の導通、断線の確認
- 接続されているワイヤからケーブルタイプの判別
- VBUS線とGND線の抵抗値の計測
- eMarker情報の読み出し
となると、やはりUCC3は全線の断線チェックができないといけないということになる。RX1-の1本が導通不良を起こしているのを見破って通知しなければならない。
しかし、現状10個の端子列でその表現はできない。なぜこのように割り切ってしまったのだろう。せっかく大画面にした自由度が活かせていない。
チェックとテスト
改めてチェッカーとテスターの違いを考察するよい機会になった。ものの本によると、チェッカーとはやや単純作業で機械的に導通があるかどうかを調べるようなものを指す。そして、テスターは未知なるものへの考察を含んだやや高尚な意味合いをもつ。素性のわからないケーブルをいろんな方法で調べて推論を経て結果を導き出すのはテスターなんだろう。
TREEDIXはアナログ版を「USBケーブルテスターボード」とし、デジタル版を「USBケーブルテスター」としている。どっちもテスターと冠してやや格上だと表現している。

いつの間にやら基板むき出しからケースに納めてType-C給電にも対応したアナログ版が2,600円で登場していた。この給電だけはUCC3にマネて欲しかった。
事件は机上で起きた

そうこうするうちに、最近ガジェットに貼っているハイドロゲルフィルムのカケラが偶然Type-Cのプラグに入り込んでB列全部をふさいでしまったようだ。不幸な事故が起きた。
そこで状態を確かめるためにテスターなりチェッカーを通して見てみることにした。
TREEDIX アナログ版

キレイにB列の導通がなくなっている。見事に今回のプラグ内の状態を視覚的にも再現できている。VBUSやGNDはコネクタ内で4本が導通されているだろうが、ピンで止めている以上はこれが正しい。
Type-CはD+/D-を除きシンメトリーなので、この状態でどちら向きに挿しても電源は流れて2.0のデータ通信も行える。
TREEDIX デジタル版

これは幽霊の正体見たりという感じだ。アナログ版でキレイにA列揃っていた表示が分散してしまった。まず、A列のD+/D-がB列に飛んでいる。これはおかしい。また、それ以外のB列点灯は本機が正確に1ピンずつの情報を取っていないことを示す。VBUS 2本しかないはずが、4本点灯してしまっている。
UCC2

一応半ラインになっているように見える。が、よく見るとB列A列がテレコになってしまっている。
UCC3

この表示だけでA列のみの配線になっていると見破れる人は大したもんだ。USB規格は2.0判定になっている。
A面で恋をして
結局、TREEDIXのアナログ版が一番実体を再現していた。点灯を見ればほとんどの人が片面になったケーブルだろうとわかるはずだ。それ以上のことはUSBテスターに譲ろう。
今回のUCC3のポートチェックはデバイスすべての情報を取れるわけではないがそれはシンクが情報を吐かない以上どうしようもない。作者をしてあの膨大なUSB仕様書を完璧に理解したと言わしめて搭載した機能を評価したい。ビジュアル的に進化させたUSBテスターによる模倣を期待する。